ウルリヒトゥレタス

皐月川納涼床

実習で異文化交流 その⑨

5日目 後編

 誘ったものの疲れ果てたらしい先生とやはり乗ってこない影武者を除いたいつものメンバーで打ち上げへ行った。普段は無料のカラオケがあったらしいが、今はお上から睨まれないよう中止しているらしい。大学の公式の授業で同じ人物と3日間も部屋を同じにしている中ではさして変わらないと思う。

 彼らと部屋で飲んだり焼肉を食べたりしたとはいえ、飲み放題は今回が初めてだった。明日で解散なので、いくら飲んでも起きさえすれば問題ない。全体的に最大HPが高めなのもあり、酒はどんどん進んだ。

 しかし、ずいぶん彼らとは打ち解けたものだ。こういうグループ分けではつくづく運がないと思っていたし今回もそういう認識だったが、終わってみれば悪くはなかったかもしれない。普段は交わることのない世界の住人たちとの交流という点では、他県での実習も彼らとの生活も同じだった。

 ホテルの部屋に戻ると、案の定影武者は寝ていた。荷物を置いてすぐ居酒屋へ行ったからほとんど部屋の様子もわからない。眠気には勝てず、倒れ込むように寝た。サウナに行こうという他の男どもに間に合うかを考えている余裕はなかった。

 

 

6日目 前編

 目が覚めたのは5時くらいだった。どうやらほぼ寝る準備をすることもなく寝ていたらしく、痛む頭で最低限の準備をし直して二度寝を敢行した。うまいことサウナの集合時刻には起きたが、連絡を取ってみると他の連中でもう行ってきたという。もちろん聞いていない。友情に一抹の不安を覚える。

 朝食のビュッフェはすばらしかった。地元の食材を揃えていて、バラエティも豊かだ。ヨーグルトが食べ放題なのも見逃せない。集合時間が近く慌てて食べるはめになったのが残念だ。あまり荷物を広げていなかったことも幸いし、またもやどうにか集合時間に間に合った。この部屋の中で起きて滞在していたのは1時間にも満たなかっただろう。

 なお、ここのホテルは全体的に古くて豪華な感じの作りだった。何世代か前のものなのだろう。昨日までのホテルは客室だけ妙に豪華だった。こちらの風呂に打たせ湯がなかったことは言うまでもない。

 再び図書館へ向かう。会議室で日誌を仕上げ、職員やスタッフの前で古本市を含めた今回の感想や学んだこと、感謝を述べた。先生が日誌を読んでいる間、最後に図書館を回った。例のヤングアダルトコーナーがいつまでもこのままであることを祈るばかりだ。女子中学生遊戯王部を主催していた者のアカウントも控えておいた。友人への土産にしようと思う。

 これで授業としては解散だ。この後は帰るのも残るのも自由となる。とりあえず、昨日のメンバーで近くのレストランへ向かった。古民家だかを改装したものらしく、この地域における地域おこしの一環とされている。特産品のピザがおいしかった。

 この後、他のメンバーは再合流してバスで空港へ向かうらしい。大きな空港がある隣の県まで戻り、そこからまた別の県へ寄り道するつもりのようだ。ぼくは愚かにもシフトを入れていたため、明日の昼にはこちらを発たなければならない。

 ちょうど、この地域の名産品である焼き物の祭りが開かれているので、その里へ行くことにした。彼らとは別れ、ここからはひとり旅になる。事前に調べたところだと駅前からバスが出ているらしかったので、駅へ向かう。

 駅の中には小さな土産物店があった。焼き物の柄を模したマスキングテープを見つけてレジへ持っていくと、店員に話しかけられた。どうやら、ここは案内所も兼ねているようだ。そこで例のアニメの現地ならではのグッズがあるか聞いたが、もう旬が過ぎたのであまりないらしい。今度は目的地である里までの行き方を聞いてみると、「通りの向こうのバス停から行けますが、本数は少ないです。次のバスに乗らないと帰りの便がなくなりますね」と言われた。バス停の方を見ると、目の前でそのバスが発車するのが目に入った。