ウルリヒトゥレタス

皐月川納涼床

実習で異文化交流 その⑥

3日目 後編

 自動車図書館の見学を終えた我々は、駅前でいったん解散した。昼食の間は自由行動となったが、メンバーは瞬く間に姿を消した。ひとりだったので、近くのファミレスの安いひと皿を食べて済ませた。その後は近くのブックオフまで散歩して時間を潰した。

 再集合後は、観光協会の会長という人物が地域のツアーをしてくれた。かつて貿易で関係があったらしく、街中で突然東インド会社の名前を見た時はちょっとテンションが上がった。ツアーは公民館のような場所で終わり、地域の現状についての軽い講義を受けた。

 さらにその後は再度図書館へ向かい、軽い案内を受ける。ぼくの地元のものよりずっと大きいように見えるし、天井が高くて雰囲気もいい。明日は、ここで古本市の準備を手伝うことになる。

 宿の前で解散したが、今日は酒の機運がないようだ。部屋に戻ってすぐ出かけていった影武者は放っておいて、夕食を考えた末に近くのコンビニで済ませることにした。他の者と外食に行けば、どうしたって金をある程度使うことになる。ひとりの時に節約するしかないのだ。

 スパゲッティを買って帰る途中、先生に出くわした。ちょうどいいのでおそるおそる影武者への懸念を打ち明けてみると、どうやら先生としても懸念点だったらしい。彼は我々よりも1年前に入学している。それが、必修に来なくなったか何かで留年したので今こうして我々と同じ3年生をしているというのだ。

 オンラインの大学生活がどういうものかというのは、我々だってよく知っている。だから同情しないではないのだが、この傍若無人さはすべてがそのせいではないと思う。これはあくまで実習だから、みんなとなかよくしなければならないということはない。だとしても、同行者としての最低限の扱いというものがあると思う。彼の我々への態度は、「存在しないもの」に近い。無視されているようなものだ。

 彼からしてみれば波長の合わなさそうな元下級生と組まされて嫌だったのかもしれないが、そんなものはお互い様だ。ぼくだって、組むのなら波長の合う若い女がよかった。倫理観の生きているギャルのような希少種だとなおよい。こういう普段は接点のない者と縁ができる好機はそうあるものではない。

 先生に部屋の電気について話すと、部屋を代わるか聞かれた。ここにはあと2泊するのだが、今日はさすがに無理でも明日ならソロ部屋をひとつ用意できるかもしれないというのだ。ごく軽い愚痴めいて話しただけなのに、先生から言ってくるとは影武者の影響力もすさまじい。

 これはありがたい申し出だったし、先生なりにできることを考えてくれたことはわかったが、辞退することにした。まず、明日の夜だけ別の部屋になっても明後日の夜には元通りだからだ。最終日の夜に泊まるのは別のホテルであり、そこでも同じ部屋に泊まる予定だが、そっちでも別の部屋を都合よく用意できるとは考えにくい。いくら会話がなくても、出ていった翌日には戻ってくるのもちょっと気まずい。

 また、何よりソロ部屋には強い風呂がない。打たせ湯も肩湯も遊べるライトもないらしい。どうせ入るのがひとりなら、今の部屋の風呂の方がいいに違いない。これらの理由から、明日も同じ部屋に泊まることにした。もしソロ部屋もこの風呂だったら迷わずそっちにしていただろう。

 

 

4日目 前編

 今日もジョニィはかなり瀬戸際になってから起きてきた。ウェカピポと同室だった方が本人にとっても周囲にとってもよかったに違いない。レディファーストは、女本人に信頼できる判断力がある場合に限るべきだ。

 午前中と午後のいくらかは古本市の準備に費やされた。やはりこういう下準備をするのは好きだと思う。昼食を探しに行ったコンビニで近隣県特産というパンを見つけもしや地域限定品ではと喜んで買ったが、後にキャンパスで同じものを見つけることになる。