ウルリヒトゥレタス

皐月川納涼床

[2021] 第3次中間報告

夕方に帰宅すると、妹が大抵テレビ番組を観ている。テレビ番組といっても通販や午後のロードショーではない。ましてや砂嵐ではない。地上波のニュース番組なのだが、最近のニュース番組の例に漏れず、ニュース以外の特集をやっている。

内容は日によって変わるが、個人経営の飲食店が多く取り上げられている印象だ。これを妹はなぜか好き好んで観ている。私にはこれが理解できず、むしろ1秒だって観たくない(この訴えが聞き入れられたことはない)。

「こだわり店主に密着」や「家族で頑張る個人食堂」、「2代目の奮闘」といったものが嫌いだ。努力だの継続だのが美化されているようで観るに耐えない。個人経営の飲食店に行くことはもちろんあるが、一生会うこともない店主のドラマを観て楽しいか?どうせその店に行くことは未来永劫ないだろう。数時間もして妹に店名を聞いてみれば何も覚えていないはずだ。

しかも、「PS4をプレイしたい」と申し出てもこのニュース番組を理由に拒否されることだってあるのだ。学校から帰ってきてテレビを使いたい、自分より時間がある兄にテレビを占領されるのが許せない、というのはまだわかる。だが、それにしてもよりによってこれというのまでは理解に苦しむ。

夕食の時間になるとようやくニュースは終わり、今度はバラエティがチャンネルに氾濫する。妹は次にこれらを観たがるが、私はこっちも嫌いだ。クイズ番組は出来レースにしか見えないし、大食い番組はどうせ食べ残すに決まっており、それらに出てくる芸人は知らない者ばかりだ。第一、何を観ても演出が過剰に感じられる。制作側はこうでもしないと視聴者の愚鈍な頭では理解できないと思っているのか?

私にとってこれらは耐え難く、すぐにでもアレルギー反応を起こしてニュークリアイジェクトするところだが、代案として提案される番組や作品がことごとく却下されるため(テレビを消すのは論外だそうだ)、現状に甘んじている。

ニュースは「つまらない」と一蹴され、アニメも「興味がない」と斬り捨てられる。映画を提案すれば「長すぎる」とどうしようもないことを指摘され、作品によっては「怖いものは嫌」と追い討ちまでかけられるのだ(ホラーならまだしもアクションまでこれに含まれる)。まだ興味がありそうなジョジョであっても「2回も観なくていい」とにべもない。自分がポケモン名探偵コナン、『ハリー・ポッター』の映画を何度も何度も観ているのはいいのか?そもそも、「ひとりの時に観ろ」という核を撃たれればなす術がない。

ドラマにおいては意見が一致することもある。『悪夢ちゃん』や『謎解きはディナーのあとで』は兄妹揃って好きだ。だが、最近では妹の好みについていけない。

義賊ものとでもいうのだろうか、秩序の外に生きる主人公たちが悪党を同じようにグレーとブラックの中間な感じの手段で(時にはもろに違法な手段で)懲らしめるという筋書きのものが妹の好みのひとつらしい。

それだけならまだいい。私が気に入らないのは、そうして秩序の外にいて利益も得ているのにいかにも秩序代表みたいな面で「こんなことよくないよ」みたいに言ってるキャラが出てくることだ。MSFくらい潔くあろうとは思わないのか?

また、復讐をテーマにしたドラマも嫌いだ。復讐に燃えるのは主人公だったりその仲間だったり敵側のボスだったりするが、共通するのは復讐を完遂しないという点だ。追い詰めても警察に引き渡すだけだったり、かっとなって殺そうとしても周囲の誰かが止める。

特に嫌なのは、十分な理由の元に復讐を望んでいた者がいて、いよいよ果たせるという時になってぽっと出の通りすがりが止めるというパターンだ。神バハで出てきた「死者が悲しまないか?」「もし今の私を見てあの子が泣くとしても、その涙はあの子が今際に流した苦痛の涙よりずっとましだと思う」が復讐論としては最上だと私は思っている。

その点『ジョン・ウィック』は安心だ。そう妹に薦めると、「どうせ主人公が勝つから嫌い」と言われた。闇の男ブギーマンだって車に撥ねられれば負けるということを指摘したが、取り合ってもらえなかった。