ウルリヒトゥレタス

皐月川納涼床

実習で異文化交流 その11

7日目 中編

 個室からの退去はまたもや慌ただしいものとなった。疲れて放り出していた荷物を持ち運べるように再編成し、漫画を籠に放り込み、忘れ物がないことを確認して部屋を出た。時間内のチェックアウトには成功した。

 知らない町でひとり放り出された格好な上に、朝早いせいでどこの店も開いていない。昨日も今朝もこれからどうするか調べるのをすっかり忘れていたせいで、行くあてもない。こんな時間では、友人の現地人も起きてはいないだろう。

 ひとまず駅へ行き、待合室のような場所で今日の計画を考える。とりあえず動くにしても、首都へ行くべきか隣の都市へ行くべきかも判断がつかない。さらに昼過ぎのフライトも迫っている。観光地を調べても、そこを楽しむのにどれくらいかかるかわからない。行ってすぐ帰るようでは未練が残るだけだ。

 そういえば、しばらくシャワーを浴びても風呂に入ってもいない。一昨日は酔い潰れて帰った後すぐ寝たのだった。そういえば快活クラブにもシャワーがあったはずと調べてみると、どうやら利用者は無料で使えたらしい。昨日使っておけばよかった。

 もう遅かったと思ったが、どうやら30分だけの利用プランもあるらしい。しかも、土日の追加料金は適用されないようだ。さっき出たばかりの快活クラブにそっと戻り、このプランを買った。店員がさっきとは違っていてよかった。

 ひとつしかないシャワーが空いていて本当に助かった。髭剃りや歯ブラシは有料だったようだが、これまでのホテルで回収してきたものが役に立った。多少は荷物の再編成もできた。また、急いで浴びたら時間が余ったのでのんきに『ゴールデンカムイ』の最終巻を読み返していたら10分過ぎた。

 そういえば、少し前からタリーズでハリポタコラボをしていた。ヘドウィグを模した熱いドリンクに巻くシールドがあるらしい。こちらでなら簡単に見つかるかもしれないし、こちらでしかできないことというのにまぁ間違いはない。大都市から首都までは歩けなくもないようだし、いくつか店を覗きつつ散歩しよう。

 大都市で降りるととても大きな建物があった。坂になっている一面が植物で覆われていて、山か何かのようだ。そこにガラス張りの円柱状構造物が生えている。文明崩壊後にも見えてくる。ちょうど近くにらしんばんがあり、カイロ・レンのライトセーバーも見つけた。これ以上持てないのが残念だ。

 地図で都会までの道筋を調べつつ歩いていたのだが、観光地マークが近くにあると気づいた。あまり最短ルートから外れることなく寄れるようだったのでルートを修正する。寄れそうだったのはふたつあった。

 どちらも洋館で、歴史的な使われ方をしていたらしい。片方はボランティアガイドもあったのだが、時間がなくて断念した。暖炉が興味深く、いくつも写真を撮った。

 満足して出てきて歩き始めたものの、どうやら時間が危ないらしい。ガイドに突っ切れと言われた大型商業施設で迷ったことも災いし、余裕がなくなっている。ゆっくり回れたのならさぞ楽しい場所だったろう。

 駅まで走ったところで、フライトの時間を少し勘違いしていたことが判明した。あくまで少しなので、間に合いはするが急ぐべきことに変わりはない。僅かな余裕は駅前のタリーズコーヒーを覗いたら終わった。ヘドウィグはいなかった。どこにもいなかった。

 急いだおかげで飛行機には無事乗れた。行きには気がつかなかったが、飛行機の座席にはコンセントがあったらしい。これでもうしばらく生き延びられる。貰ったキットカットは大事に仕舞い込んだ。

 後に仕事が待っているからか、帰りのフライトはあっという間だった。実際に予定よりも早く着いたようだが、前の飛行機がまだ乗降口にいるので結局は予定時刻とあまり変わらない到着となった。アナウンスは申し訳なさそうにしているが、あなたは悪くないと思う。