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皐月川納涼床

地雷系女と破滅への30日間 『NEEDY GIRL OVERDOSE』

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今回紹介するのは、ちょっとタイトルが長いのでNGOと略すと非政府組織と同じ略称になってしまう上に、NEEDYに「貧しい」の意味があるので尚更紛らわしいことでおなじみの『NEEDY GIRL OVERDOSE』。非政府組織は多くの人に頼られているが、この女は依存しきって生きている。

プレイヤーは「」となり、「あめちゃん」とそのネット上での姿「超絶最かわ天使ちゃん」(略して超てんちゃん)を育てることになる。配信でフォロワーを稼ぎ、目標は100万フォロワーを誇るインターネット・エンジェルだ。ストレス、好感度、やみ度の3つのステータスを管理しつつ、あめちゃんのやる気が続く限界の30日以内に達成を目指そう。

なお、この記事はSteam実績を半分ほど埋めた段階で書かれている。全部埋めた後に見返すとめちゃくちゃなことを書いていそうで今からとても不安だ。

Windose20なるOSのどこか懐かしい起動画面の後にセーブデータを選択すると、デスクトップ画面へと移る。ゲーム中のUIはPC画面を模しており、メッセンジャーアプリ「JINE」であめちゃんと会話したり、SNSアプリ「ぽけったー」からあめちゃんの投稿を確認したり、ショートカットからコマンドを選択して実行することになる。

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表垢と裏垢との落差がすさまじい

1日の流れは簡単。各時間にあめちゃんへ指示を与えるだけでいい。あめちゃんは昼にならないと起きられないので、時間帯はひる、ゆうがた、よるの3つが存在する。

配信は夜しか行えないので、日中はステータスを調整したり新たなネタ探しに励むこととなる。ネタにはジャンルとレベルが存在し、レベルは段階的にアンロックできる。新たなネタを発見できるコマンドはアイコンで教えてくれるので、困ったら選んでみてもいいかもしれない。

あめちゃんといちゃついてストレスを低下させたり、SNSで事前告知して配信に来る人を増やしたり、薬を服用してみたりとコマンドの内容は多岐に渡る。物によってはひるからよる、ゆうがたからあしたまでかかるものもあるので、時間との相談も必要だ。色々試して配信に備えよう。なお、コマンドが終わるとあめちゃんは内容に応じてぽけったーへの投稿を行う。裏垢の内容も必見だ。

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選択したスパチャは最後に読み上げてくれる

夜になればインターネット上に人が集まり、配信ができるようになる。ざつだんやかいせつなどのジャンルがいくつか存在しており、ジャンルによって増えるフォロワー数や溜まるストレスなどステータスの増減が異なる。

ゲーム配信ならフォロワーの伸びはそこまでな代わりに増えるストレスもほどほどだが、えっちな配信ならフォロワー数もストレスも激増する、といった具合だ。ひとつのネタは1回しか配信できないので、適度にネタを探して選択肢を確保しつつ、どの配信をするか悩もう。

配信中、ピは配信のスピードと画面横に表示されるコメントにのみ干渉できる。心ないコメントをそっと削除し、色付きのスパチャからどれを読み上げるかを選択しよう。選択できるスパチャはふたつまでで、それ以上選択すると古いものが読み上げ対象から外れる。的確にコメントを削除すると、あめちゃんのストレスがわずかに減る。

なお、よるに配信以外のコマンドを行うことも可能だ。ただし、配信で増えるフォロワー数は基礎的な数値にあめちゃんの能力ボーナスと連続配信ボーナスを掛けたものとなる。連続配信ボーナスはかなり大きいので、フォロワー数を増やしたいのならなるべく毎日配信することを心掛けたい。

以上を繰り返してDAY30を、そしてフォロワー数100万人のインターネット・エンジェルを目指すのがこのゲームの基本的な流れとなる。ちなみに、一定の人数に達すると特別な配信として記念配信もアンロックされる。この配信はストレスややみ度が溜まらないので、安心して超てんちゃんの成長を祝おう。

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好きなものはピと向精神薬

このゲームにおいて特筆すべき点は、インターネットという世界の完成度だろう。細かなところにまでパロディが散りばめられ、配信中のコメントや掲示板の書き込み、あめちゃん&超てんちゃんの言葉遣いにもリアリティがある。

配信のネタひとつを取っても、ゲーム配信だけでなくASMRや陰謀論が含まれていて、現代の配信者らしい。しかも、陰謀論やえっちな配信だと人が増えやすかったりする。それでもすべてこなしてしまうあめちゃんは、もしかしなくても結構優秀なのかもしれない。結構いいことを言ったりするのだ。

あめちゃんについては、20代前半女性メンヘラとしての再現度がすごいとの呼び声も高い。何かあると(というか何もなくても)JINEが飛んでくるし、未読無視すると怒られてしまう。表垢でオタクに媚びて、裏垢でピとの惚気を垂れ流す。

そんなリアリティ息づくインターネットで、わがままですぐ毒を吐き、そしてピが大好きなあめちゃんは生きている。そして、解像度高く再現されているのはインターネットミームだけではない。姿の見えない悪意もまた、確かに存在しているのだ。

本作はステータスやピの行動で分岐するマルチエンディングシステムを採用しているが、開発元が誇らしげに「マルチ破滅エンド搭載」と称するほどに救いがない。見えない悪意によるもの、あめちゃん自身の抱える闇によるもの、軽いものから重いものまで多種多様だ。バッドエンドのダイバーシティか?

前述の通り、PCのようなUIを通した「何をするか」や「どんな配信をするか」といったことの指示に、あめちゃんはほぼすべて従う。しかし、ゲーム中に突然操作ができなくなり勝手に進行する場面がたびたび訪れる。

この突然制御不能になって動き出し、その果てはわからないという状況が、さっきまで自分の手で動かしていたものが未知へと変わる瞬間が、余計に恐怖を煽るのだ。転がり出した運命が破滅に向かうのをただ見ていることしかできないのが、あめちゃんに何もできないピと重なってどうしようもなく重い気分になる。

エンディングや実績を埋めようとすると、必然的にあめちゃんの破滅を幾度となく目にすることになる。セーブデータの選択画面に戻り、今度こそはあめちゃんを幸せにしたいと思い、それが木端微塵に打ち砕かれるのを繰り返す。だんだんループものの登場人物みたいな気分になってきた。

それでも、オタクに救いをもたらしてくれるインターネット・エンジェル超てんちゃんと、ストレスを溜めながらもピの指示に従って必死に生きるあめちゃんがたまらなく愛おしくて、また破滅を見届けるのだ。そんな『NEEDY GIRL OVERDOSE』は定価1680円で発売中。

 

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