ウルリヒトゥレタス

皐月川納涼床

死亡報告: 2023-1

 成人の日なんて大嫌いです。

 

 

 

<アルバイト>

 以前あったシークレットショッパーによる潜入調査の結果が発表されました。一般客のふりをして来店し、項目ごとに点数を付けて評価するのです。私のいる時間帯はそもそも彼らに遭遇する確率が低いのですが、それでももし当たっていたらどうしようかという密かな恐れは残っていました。

 点数化されている以上は店舗間で順位が生まれるのですが、なんと今回は我々の店が1位でした。これまでは可もなく不可もなくくらい*1だったのに、突然の快挙です。店舗数はそれなりに多いので、簡単に取れるものでもありません。

 この理由は単純でした。ショッパーを接客したのは店長だったからです。

 普段は店長の適当さやズレ具合ばかりが目立ちますが、接客という点においては確かにプロなのでした。精神論が少しばかり混じったような接客理念は、調査会社とも波長が合っていたのでしょう。添えられていた調査員からのコメントも、非の打ち所がないような感じでした。

 とはいえ、1位を取れたのはこれが店長だったからです。アルマンならまだしも、私や新入社員が接客していたらもっともっと低い順位だったことは確実です。アルマンは「成長しない」ことが許せないタイプですから、ましてや順位が下がるのは嫌でしょう。そんなわけで、アルバイトにももっと接客の質を上げろというおはなしがなされたのでした。来年は最初から店長に当たるように調整すればいいと思います。

 ところで、このことがLINEグループで報告された際、アルマンが店長をさすがと称賛していました。やっぱりプロなのだなぁと私がその様子を眺めていると、店長が「ありがとう!新入社員に店頭で説教している時でなくてよかった!」と返していました。

 本当に、その通りだと思いました。

*1:なのにアルマンはこれが気に入りませんでした

生存報告: 2022-12

 2022年もおしまいです。楽しい思い出がいっぱいの素敵な年でしたね。幸福があるのもここまでです。

 

 

 

<学校>

 今年もまた、委員会の局旅行がありました。今回の行き先は伊東です。

 悲しいことに、去年とは違い3泊2日になったことをすっかり忘れていたため、シフトを入れてしまっていました。ですから、退勤後に直接伊東を目指します。

 職場の場所も悪く、退勤後の時刻では安いルートが使えそうにありませんでした。割と危うい橋を渡りながら伊東へ到着した時は、もう23時を回っていました。私が乗ったのは終電だったようです。

 伊東には2回来たことがありましたが、グループにあった名前の宿は未知領域にあるようでした。真っ暗で人気のない伊東の町を歩いていると、もう日付が変わりそうなことに気づきました。そして、もう目の前まで迫った明日は私の誕生日です。

 深夜の路上でひとり歳を取りたくなくて、私の誕生日を覚えている数少ない知り合いのひとりへ電話しました。以前、通話しながらこの者の誕生日を迎えて祝ったことがありましたから、私のことも祝ってくれると思ったのです。今はハワイにいるはずでした。

 ところが、電話には誰も出ず、そのまま私は22歳になりました。数分して電話は繋がり、電話して祝うつもりではいたもののうっかり寝てしまったとのことでした。その瞬間はひとりだとしても、私のことを覚えて祝おうとしてくれた人がいるというのはたまらなく嬉しいものです。

 ようやく宿に辿り着いたところで、部屋番号を知らないことを思い出しました。電話で聞いてみると、どうやら宿をすっかり間違えていたことが判明します。伊東は温泉で有名ですから、「今回の宿泊先にはないけど、温泉に行くならここがあるみたいだね」という会話を勘違いしてしまったようです。

 再び夜道を歩き始めました。途中、川を見つけてそれに沿って歩きました。両岸には旅館が立ち並び、暖かな灯りが漏れ出しています。温泉地の宿となるとやはり風情があっていいですね。また、小さな噴水のようなものもあり、触れてみるとそれは温泉でした。

 今回の宿泊先は、去年と同じく家まるごとを借りる方式の宿でした。他のみんなは明るいうちからこの旅行に参加していて、城や海に行った末のことでしたが、私はやっとそこに合流できたのです。もう夕食も済ませていたとのことで、私は余った分を貰いました。

 翌朝、我々はバナナワニ園へ向かいました。ここでは様々な種類のワニや植物を観察できます。もうかなり昔からある感じの施設でしたから、思っていたよりコンテンツ量が多いことには驚きました。建物だって、いくつかあるのをバスが巡回しています。

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 このワニの写真は特にお気に入りです。上のワニのいかにも爬虫類といった狡猾そうな目なのに対し、下のワニの目は愁いを帯びていてかわいいですね。ひとつの建物がすべてワニに占拠されていました。

 次に行ったのは植物園で、いくつもある温室を見て回ります。年末なのに南国のような気分でちぐはぐです。食虫植物のエリアもあり、男どもは興奮していました。私もそのひとりです。オジギソウは疲れているのかあまり萎みませんでした。フトモモという植物が印象的でした。

 3つめに行ったのは、植物も動物もいる館です。なぜかレッサーパンダやフラミンゴ、南国っぽい鳥がいて、急に毛色が変わっていました。純粋なかわいい系統もバナナワニ園にはいるんですね。植物もたくさんあったのですが、時間が足りずすべてを見て回ることができなかったのは少し心残りです。とはいえ、名前だけは知っていたバナナワニ園にやっと行ったのでした。

 その後、足湯(寒いためか肌が白すぎて不健康そうと言われました。とても心地よかったのですが)に浸かったり懐かしきアンダの森バスを目にしたりしつつ、大室山というところに行きました。山の麓からロープウェイが出ています。

 頂上付近はカルデラのように中央が大きく窪んでいて、それを取り囲む頂点の部分を一周するのが定番なようです。記念写真くらいは撮れましたが、ここもバスの時間が迫っていたので回る余裕はありませんでした。とても綺麗な空の下、遠くの海までもが見えました。

 さて、この日の夕食はカレーです。毎度ながら、ここにいる女の料理スキルには素晴らしいものがあります。手伝おうにも彼我の能力差は歴然としていて、その他の作業で支援するしかありません。来年には手料理をみんなにふるまえるようになっていたいものです。

 ご飯も終わって、みんなでUNOを始めました。こういう時の順番決めの方法はいろいろありますが、ひとりが「誕生日がいちばん近い人で」と言いました。おっと、たまたま誕生日=今日な私ですね。本当にうっかりだったのでしょうが、一瞬場が静まり返りました。

 そうです、この旅行の楽しみといえば、私の誕生日です。こんなに大勢から毎年祝ってもらえるとは、なんて幸福なのでしょう。やはりサプライズにしたいようで、密かに買ったケーキを準備する間、そこへ近づかせないために私を釘付けにしてくるのを悟るのがたまらなく幸せです。今年も、水を汲もうと立ち上がりかけたら即座に水が注がれたり、酒を押し付けられたりと楽しかったです。とりあえず酒を渡しておけばいいと思っていませんか?

 夜、女はすぐに寝てしまいがちですが、男はなかなか寝ようとしません。ふたつあった男部屋が薄い壁*1だけを隔てているのをいいことに、楽天カードマンを爆音で流す争いが繰り広げられていました。大学でもこういうことができるのは楽しいですね。男子校時代に戻った気分です。

 翌日は三島スカイウォークというところに行きました。とても長い長い橋が、山と山とを繋いでいます。いつかニュースで見たことがあったのを思い出しました。がっしりした構造ではありますが、やはり地表が遥か下というのは怖いです。私は立派に高所恐怖症ですからね。

 なのに、ジップラインに挑戦することにしました。普段パスファインダーが射出しているあれです。橋と平行になる感じに綱が張られており、そこに吊ってある小さな椅子のようなものにしがみついて渡るのです。さすがに現実では上から下にしかいけません。

 途中で撮影してもいいそうですが、谷底に落としそうなのでやめておきました。自撮り棒とか手首に固定できるものとかあったら別でしたが。また、実際に滑り出すとくるんと身体が回転して進行方向と逆ばかり向いてしまうことが判明しました。ぐんぐん遠ざかっていくスタート地点と谷底を見るのが精一杯です。

 他にもいくつかアクティビティはあって、セグウェイで山道を走るのに挑戦した者もありました。思っていたより費用が高かった*2ので遊ぶのはジップラインだけにして、他の者を待ちつつ昼食を食べていました。

 こうして今年の局旅行も終わりました。叶うなら来年こそは年越し旅行をしてみたいものですが、そうするとコミケに行けなくなりますし、他のみんなもそうやって事情があることでしょうからそう簡単にはいきそうもないですね。行けるだけでも感謝すべきでしょう。

 

 

 

<徳島>

 徳島県へ旅行に行きました。ようやく旅行支援を使ったことになります。

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 今回の目的地は、大塚国際美術館というところです。山を掘って造られているところも面白いのですが、この美術館の最大の特徴は世界各国の贋作が集められているところにあります。贋作といっても、ただの贋作ではありません。運営している企業の技術力によって作られた、焼き物なのです。

 陶板に印刷することで作品ができており、真作やそのまま絵として再現された贋作とは違い、自由に触れることもできますし、サイズも原寸大です。ガラスケースやパーテーションもなく、例えば『最後の晩餐』のように大きい作品であろうとそのまま再現されているのです。

 それは絵画だけではなく、礼拝堂や聖堂すらそのまま再現されています。最初に美術館の紹介をシスティーナ礼拝堂で受けたのですが、この時点で遥か上まで続く壁画に圧倒されました。少し前の紅白歌合戦で米津玄師のパフォーマンスに使われていたのがここだったそうです。

 また、収蔵品の幅の広さもかなりのもので、世界中の名画をいつでも観られます。『ひまわり』だって一堂に会していますし、焼失してしまった芦屋のものすら再現されています。コナンの映画にも出ていましたね。

 遥か過去から時代を遡り、最後に現代の作品に到達するのが公式推奨の楽しみ方なのですが、あまりに長すぎて時間が足りませんでした。普段からじっくり時間をかけて回る派なのもありますが、鑑賞ルートは全長約4kmといいますから、さすがにスケールが違いました。道中、いくつも宿泊施設を見ましたから、そういうところに泊まって数日にわけて回るのがよさそうです。まるでルーヴル美術館ですね。

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 また、今回泊まった宿の近くには阿波おどり会館なるものがあり、そこから山の上までロープウェイが伸びていました。着いた時にはもうクローズが近くて十分に見て回ることはできませんでしたが、展望台から見る徳島の夜景はとても綺麗でした。これは眉山というそうです。しかし、もう最終便みたいな感じのロープウェイに乗って帰ったのですが、まだ展望台に残っていた人たちはどうしたのでしょう?

 普段は関東から出ない私にとっては、はじめての経験がたくさんでとても楽しい旅でした。佐賀もそうですが、こういう旅もいいものですね。

 ぜひとも、また行ってみたいものです。

*1:正確には鎧窓のようになっている壁でした

*2:スカイウォークへの入場料とは別で2000円以上したと思います

生存報告: 2022-11

 ほぼ何も思い出せません。今と同じように生きたはずの1ヶ月がまるで存在しなかったかのようで、とても虚しい気分になりますね。

 

<学校>

 実習のほとんどはこの11月でした。この一部始終は別の記事にまとめていますから、もし興味を抱いて頂けたのなら、ぜひそちらをご覧ください。

 終わってみれば案外楽しかったもので、この学部に入ってよかったですね。こういう時のメンバー運には依然として不安が残ったものの、これはきっとどうしようもないのでしょう。

 さて、大学祭はどちらも先月に終わっていましたが、それは我々3年生の引退を意味しています。本祭直後にお疲れ様式典が簡易的に開催され、もう割とそこで気分的には引退していました。しかし、きちんとした形式的な式典はまだでしたから、それが行われました。

 お待ちかねの余剰協賛品分配ビンゴ大会もありました。これは結局我々対外部が手に入れたものですから、我々だけで責任を持って処理するのが筋だと思います。なぜか余った美術館のペアチケットが企画局の彼女いそうな男の手に渡った時に、この責任感は一層高まりました。対外部は常日頃から稼いだ金を献上しているのですから、来年はぜひとも対外部にも役得が欲しいところです。3桁あるボーリング割引*1券だけは勘弁ですが……。

 この会では、次期幹部の選出が行われます。とはいえ我々の広報局は割と既定路線*2ですから、特にドキドキはありません。他の局は選挙をしていたようですが、あまり関係はないのでしょう。他の局との交流の薄さは、今なお深刻です。

 会が終わると、後輩たちがアルバムと花をプレゼントしてくれました。どこからかき集めたのか、私の写り込んだ写真がいくつも貼られ、おしまいには対外部のみんなからのメッセージまでありました。

 去年、我々もアルバムを作って渡していました。それを今度は自分たちが貰えるというのは、とても感慨深いものがあります。いよいよ、我々も引退するまでに成長したのですから。私など、前日からちゃんと貰えるかそわそわしていました。

 付き合いの長い2年生もなかよくなってきた1年生も、「馴染めていなかった頃に親しみやすく話しかけてくれて助かった」みたいなことを言ってくれたのが特に嬉しかったのです。畏怖よりも親近を抱かれたくてこれまでやってきましたから、それが報われた気分です。

 このアルバムは、人生のトロフィーのひとつとなることでしょう。過ぎ去った思い出を穏やかに懐かしめるような。こうしたトロフィーをいくつも持てるような生き方でいたいものです。

 その式も終われば、やはり打ち上げがあります。今回は鍋の店が予約されており、いざ入ってみると店の一区画を丸ごと貸し切る形になっていました。テーブルがいくつか連なる広間と、4人サイズの半個室が4つほどで構成されています。

 ところが、とりあえず座りなと後輩を席に配置していたところ、気がつくと私の席がありません。広間はもう満員です。半個室でひとり鍋を調整していると、ソロキャンでもしている気分になってきます。

 幸いにも、私ともうひとりが鍋をつついているところに後輩が続々と来てくれました。来たのは男ばかりでしたけどね。中央の方では、ミラージュが恋バナの音頭を取っているようです。一緒に鍋を囲んだクーパーはかなり酔いが回っていたようで、「おまえの縞の数を数えろ」とボーダー柄の服を着た男に絡んでいました。彼のセンスを本当に羨ましいと思います。

 こうして、我々は完全に*3引退しました。まったく、彼らと知り合えてよかったと心から思います。それでも、彼らを愛せば愛すほど、過ごした時間の違いが、自分だけ最初からさいなかった後付けであることが痛いまでに感じられるのでした。

 

 

 

<アルバイト>

 今年もまた、覆面調査の季節がやってきました。ご存じない方のために軽く説明しますと、これは施設の運営が業者に依頼して行う一種の抜き打ち検査です。

 客に擬態した調査員が期間中のどこかで店に潜入し、密かに店や店員を採点します。特徴的なのは、接客の採点に重きが置かれているところです。しかも独特な感性をしていて、鬱陶しいくらいにまで客に構わないとマイナス点を付けてきます。当然、私が好ましいと思う接客とはほぼ対極に位置していますから、私には難しいものです。

 しかし、今年は店の全員が同じことを考えていました。新入社員に当たったらおわりです。彼は接客以前の問題で、店が始まって以来の低評価を叩きつけられると誰もが確信していました。

 かといっていつ来るかもわからない調査員から彼を確実に隠すことは非現実的です。彼自身が成長するか彼に当たらないことを祈るしかなかったのですが、当の彼は依然としてミスを繰り返し、アルマンの胃に負荷を与え続けるのでした。

*1:重要

*2:前年に選出された副局長が実質的な次期局長

*3:長たちは別です。引き継ぎがあるからです

生存報告: 2022-10

 ひとたび手を抜くことを覚えると、ヒトはそれに慣れてかつてできたはずのこともできなくなってしまうものです。まえがきも同じですね。

 

 

 

<学校>

 とうとう大学祭がやってきました。対面形式での開催である点は去年と違います。どうにかこうなったことには安堵すべきでしょう。もし学生生活課がケチをつけてきたら、松明を掲げてステューデントセンターを包囲するところでした。大学側の職員を信用できずに就活の相談へ行くことを躊躇しているのも、学生生活課のクズ共と老害警備員のせいです。

 対外部に当日の仕事はないと思っていたのですが、今年はちょっと違いました。対外部の2年生のひとりが福引を企画し、やっぱり景品は協賛品から賄われるので協賛品をよく知る我々が福引の担当になったのです。

 本当にそうなったらよかったのに。

 シフトを確認すると、なぜか私は福引に一切入っていませんでした。代わりに「外周警備」、「GS」、「パレード」、「教室待機」という未知の文字が並んでいます。どれも去年はなかった仕事です。それぞれの仕事内容について書いておきましょう。

 「外周警備」とは、大学祭の真っ最中にわざわざキャンパス外に出て周辺を警備する仕事です。最初は駅との間で来場者を誘導して見守るのかなとか思っていたのですが、説明を受けてみるとまったく違うものでした。

 キャンパスは僻地にありますから、近くには駐車場を備えた店がいくつもあります。そして、そこに車を停めて大学祭に来る連中がいるらしいのです。きちんと「自転車も自動車も停めるところがない、公共交通機関で来い」と告知はしてあるのですが、それでもです。

 正直言って知ったこっちゃありません。義憤など感じません。ちょうど少し前に近隣でのライブ客の駐車場利用を拒否したファミレスの話がありましたが、あれで非難されていたのはライブ客が主であったはずです。今回もあくまで悪いのは客であり、主催側たる我々は告知をもって最低限の義務は果たしていると思います。

 「地域のための大学祭」だなんて言い出したのは、いったいどこの馬鹿なんでしょう。弊学部が地域を扱うものだからさして疑問に思わずにいましたが、大学祭は学生のためのものです。本土のキャンパスはそんなもの掲げていないと最近知りました。学生と関係者以外シャットアウトしろとまでは言いませんし交流はおおいに結構ですが、地域の老いぼれ共に発言権はないはずですし、間違っても我儘を聞いてやる道理はありません。

 1シフトには3ペアが配属され、それぞれ別のエリアに展開します。ふたつのエリアでは複数の駐車場を巡回しますが、残るひとつはあまりに僻地にあるのでひとつの駐車場のみを監視します。そして、店を利用せず大学の方へ向かう者があれば注意するというのが仕事の内容です。

 なお、配布されたマニュアルによれば、シフト中は携帯端末の使用どころか私語すら禁じられています。昔に「やる気があるのか」と怒られた事例があったためだそうですが、そこを切り捨てれば済む話だと思います。そんな店があったのならぜひ教えて欲しいものです。対外部のブラックリストに入れて後輩にネガキャンします。

 まぁ、結局は私語をしてもお咎めはありませんでした。駄弁ってヒットマンの警備員ごっこをして過ごしました。というか、それくらいしかすることがなかったのです。2日間で私が配属されたのはふたつのエリアでしたが、至極暇でした。怪しい車があったような気もしましたが、たぶん気のせいです。我々が来る前からありましたし。

 ある時は去年まで広報局にいた先輩と一緒になりました。あまり話す機会はなかったのですが、後述するパレードのシフトがどんなものかという憶測について話している内に結構盛り上がり、有意義な意見交換が行われました。議題は女の服の好みです。去年、チアの演者たちを教室の上階へ送る時に、彼女たちが衣装のまま私の眼前で階段を駆け上がっていった話もしました。先輩は深い関心をもって聞いているようでした。

 「GS」というのは、ゴミステーションの略です。なぜかはわかりませんが、大学祭の期間中のみはゴミの分別がより細分化され、専用のゴミ箱がキャンパス内に設置されます。当然、それを置いただけでは無視されますから、ゴミ箱の横で分別を呼びかけたりそれでも分別せず捨てられたゴミをわざわざ拾い上げて分別する役が必要とされたのです。

 私が割り当てられたのは2回で、そのどちらも同じ場所に配置されました。一般開放されている学食の外だったものの、ほとんどの人は学食の中で捨てるので暇でした。また、賑わいのホットゾーンからも離れていて、通る者もあまりありません。

 とはいえさすがにステージの音は幽かながら流れてきて、それがかえって賑わいの外側にいるという実感を生むのでした。話し相手はおらず、気の利かないことに椅子もありません。こういうところこそ、デジタル化が求められています。

 「パレード」とは、キャンパス内で開催されるパレードの警備を行う仕事です。応援団、ダンサー、吹奏楽団の順の隊列に同行するのです。パレード防衛と聞くと嫌な思い出が蘇ります。「遊園施設」を流してくれたら許せます。

 さて、そもそもなぜこのシフトが生まれることになったのでしょうか?その原因は、ダンサーたちにありました。

 ダンサーは、チアガールみたいな服装をした女たちです。私には彼女らの演目をチアリーディングとバトントワリングのどちらと呼ぶべきかわかりません。ミニスカートで踊っていればチアなのかもしれませんし、棒を投げていればバトンなのかもしれません。そのどっちもしている場合の判断は無理です。とにかく、この原因は彼女たちでした。

 同じパレードに参加する3つのグループ*1の内、彼女たちだけが撮影禁止を要求したのです。そのおかげで、我々は撮影禁止の看板を抱えて随行するはめになったのです。

 ただでさえ人手が足りないのにまとまった人数を一定時間割かなければならないとは、これが経営シミュレーションゲームなら重めのマイナスイベントですよ。報酬もないですし。パレードに出てもらうにはこうするしかなかったのかもしれませんが、ダンサー側も我儘を言ってもいいのか考えてみてもらいたいものです。

 最後の「教室待機」とは、これもまた名前の通りです。実行委員会が押さえている教室のひとつは、カラーコーンやポールをはじめとした諸々の備品倉庫として使われていました。各企画が使うものは準備中に倉庫から運び出され、本祭の間はここに置かれます。中継地点のようなものでしょうか。例えば福引企画なら、下位賞のいっぱいあって現地には置き切れない景品を置いておく感じです。

 しかし、ほとんどの必要な物品はすでにそれぞれの場所で使われていますから、残っているのは使わないものか使う機会の限られているものです。それらの置かれた教室にひとり配置される訳です。

 こんなところに盗みに入る者があるとは思えませんが、警備するにしても鍵を本部管理にすればいいだけだと思います。本部はすぐ近くですし、そう頻繁に開ける部屋でもありませんからね。

 ここもまた、孤独な場所です。他のシフトに負けず劣らず意義を感じられない虚無に満ち溢れています。ちょうどステージや出店の方に窓が向いているため、その楽しそうな光景だけ見えるのがGSと逆ですね。

 本祭中は、シフトのすべてがこれらで構成されていました。対外部の他の同期は福引に配置されたり対子供企画に配置されていたのに、この扱いの差はどこから来たのでしょうか。去年の大学祭では普段は縁がない他の局の委員や先輩と知り合ったのに、今年は孤独が強く感じられる年になりました。

 福引にまったく縁がなかったことはありません。準備日にテントの設営を手伝いました。テントの作り方講座はどうせ縁がないとスルーしていたのに、人手が足りないせいかこんな末端でもテントを作るはめになりました。来年には忘れていることでしょう。

 初日は、3つのシフトの虚無さを知ることになりました。外周警備で先輩とチアの服について議論したちょうどその後、パレードに配置されたのは面白かったですね。

 パレードのシフトは、虚無どころかかなりの役得です。ダンサーを誰よりも近くから拝めるだけでなく、吹奏楽団の演奏も至近距離から聴けるのです。私は端末のカメラが弱いのでやめておきましたが、今年は全委員に記録のために撮影権限が与えられていたので撮影も自由です。しかも、これらすべてを合法的に行えるのです。

 さて、先輩との意見交換会を終えた私は、時間が近づいていたのでパレードの開始場所へと向かいました。現地ではすでに参加者が最後の調整に勤しんでいます。バンドを投げ上げて落とすのはなんらかの儀式でしょうか。

 本来、このパレードはステージ企画という部署の管轄です。指示を仰ぐと、我々は撮影禁止の看板を持ってパレード内のダンサーを四隅から囲うようなフォーメーションで随行せよとのことでした。これも含め最終確認をしていると、見るからに怪しい様子の中年男が「撮影はできますか」と声を掛けてきました。

 今回、撮影できるのは①我々実行委員と②事前に申請して許可を得た者のみです。後者には腕章が配られているのですが、この男は持っていないようでした。この旨を伝えると申請はしていると返ってきたので、トランシーバー持ちが本部へ確認を取り始めましたが、その間にも何度も撮影できるか聞いてきます。

 見た目で他人を判断するのはいいことです。他の人と様子が違うというのにはきっとなんらかの理由があり、それをわざわざ調べている余裕はないからです。外見や言動を取り繕わないのはあえてのことでしょうし、その点だけですでに警戒して然るべきです。「こうすれば周りと同じで溶け込めるのに、なぜわざわざそうせずにいるのか?」ということを警戒すべきなのです。つまり、こいつは特に縁者ではないけどダンサーを撮影したいだけの一般通過男性であると私は結論づけました。

 本部からの返事がすべてを明らかにしてくれると思っていたのですが、なぜか男はいつの間にか姿を消していました。本部やステージ企画の連中にしても、申請があればよし、なければ要注意人物の特徴を整理して我々へ警戒を厳にするよう通達するなり本職の警備員へ応援を要請するなりの対応を取るべきだったと思います。しかしまもなく時間が来て、パレードは始まってしまいました。

 私の配置は左後方でした。AT-STよろしく首を振って随行していると、さっきの男がいました。なぜか最前列でしゃがみ込み、ラジオのような機械を持っています。ローアングルから盗撮しているのかもしれませんが、今は何もできません。せめてダンサーとの間に割り込むよう努めました。

 その後は上述した通りです。至近距離での生演奏と演技を鑑賞できるのを役得と言わずしてどうしますか。こういう仕事でもなければパレードに参加することもないでしょうし、いい経験でした。ダンサーは行進しながら演技をするのですが、バックステップも挟んでくるのでどれくらい近づいてもいいのかがわかりにくかったですね。

 道中、何人か撮影している者を見かけました。腕章持ちはよしとして、腕章がない者もいたのですが、参加者の友人一同っぽいそぶりだったので不問としました。どの道、私にできることはありません。

 その後、GSへ行きがてら福引の様子を見に行くと、後輩たちが働いていました。いつもと変わらない顔ぶれではあれど、ここにはヒトがいます。仲間と働く喜びは、希少ながら存在するものです。私の欲しかった「ザ・文化祭」の概念も、仲間と働くことが大きな部分を占めていますからね。

 それなりに忙しかったようなので話したのは2年生の後輩とだけでしたが、彼女は今日ずっとここにいるとのことでした。他の人々も似たり寄ったりのようです。椅子があるので疲労はある程度緩和できるかもしれませんが、それでも負担はあるでしょう。

 ちょうど、GSの前任者が広報局の同期だったので、この者に金を渡してお使いを頼みました。これで飲食物を買って、私の代わりに差し入れてもらうことにしたのです。休憩時間に頼むのはちょっと申し訳ないですが、駄賃として何か買ってくれて構わないと申し添えたのでそう悪い話ではないはずです。

 後になってわかったことですが、彼は福引のテントに4人いると確認してコンビニへ行き、肉まんを4つ買ってさらに自分用にピザまんを買いました。ところが、戻ってみればひとり増えており、彼はピザまんも差し出したとのことです。いい人ですね。

 初日はこんな感じで終わりました。後輩を連れてサイゼリヤへ行こうとも思いましたが、人が集まらず同期ふたりとラーメンを食べて帰りました。そう焦らずとも、メインは明日です。

 2日目も変わらず福引はありません。またもや朝から外周警備でキャンパスから追い出され、相棒だった同期と話しながらキャンパスへ帰投していると、後輩から電話がありました。私の次のシフトは休憩だったのですが、シフト変更で後輩と一緒にステージ担当になったから急いでくれとのことでした。

 1日目の夜にステージ企画の責任者から全体へ連絡があり、①今日のパレードでは多くの無許可撮影を許す結果となった、②明日は大幅に人員を増強して対処すると通達されていたことを思い出しました。私と私の休み時間はその犠牲となったのです。

 いったいどうやって調べたのでしょう。苦情が来たか、それとも誰かを捕まえたのでしょうか。今日もチアだかバトンだか、もしくはその両方のパフォーマンスがあります。看板を増やしたところで何がどう変わるのかはわかりませんが、ダンサーと一般通過男性のおかげで朝から出店へ行く計画は露と消えたのでした。

 ステージへ出頭すると、ちょうどまもなくダンサーがパフォーマンスを始めるところでしたが、看板を持ってステージ近くで警戒しているとすぐに終わりました。シフトは1時間刻みなので、まだ結構時間が残っています。

 責任者に指示を仰ぐと、次のお笑いのステージも撮影禁止なので引き続き看板を持っていてくれとのことでした。ステージ付近では配置転換が行われ、客のエリアがぐっとステージ近くまで寄せられていました。私が配置されたのは、なぜかそのエリアとステージとの間に設けられた1畳を横にずっと並べたくらいのスペースです。一段高いステージがあって、そのスペースを空けて客席(立ち見ですが)がある感じです。

 しかも、配置指示はその真ん中です。図らずしてセンターになってしまいました。おとなしくそこで看板を持ってしゃがみ込みます。他の委員がステージの脇の方に固まっているのが見えますが、私のようにステージ前へ配置される者は誰一人としてありません。人に囲まれて孤独な戦いが始まります。

 最初は学生芸人によるステージで、次にプロの芸人が出演するステージでした。そのどれも撮影禁止らしく、私はずっと同じ場所にしゃがんでいました。この撮影禁止増員措置はダンサーのためではなかったんですか?こんなところでしゃがんでいても、観客の目はみんなステージの上を向いているのであまり意味はないと思います。少なくとも人を置く必要はないのでは?

 ステージ脇の委員に目を向けても、「かわいそうに」みたいな視線を返されるだけです。ここ、本職がいなくていいんですか?しかも、次のシフトが始まる時刻になっても交代を寄越してはくれませんでした。次の外周警備の相棒からの連絡でポケットの中では携帯が震えているものの、さすがにここで取るのはどうかと思ってスルーせざるを得ませんでした。

 今回招かれた芸人はそれなりに有名なようでした。疎い私の認識は信用できませんが、知ってるという者も何人かはいたのでそうなのでしょう。漫才中の彼らにきっと誰よりも近い場所にいながら、ステージに背を向けていたので顔は見ませんでした。ただ彼らと観客の声だけが聞こえてきます。

 脚がどうしようもなくしびれてきた頃、ステージが終わりようやく解放されました。外周警備へはゆっくり歩いて向かい、すぐにゆっくり歩いて帰ってきました。今もなお怒られていないので問題ありません。

 その後にも外周警備がありましたが、ちょうどパレードと重なっていました。4年生の男が何人かそちらへ回された結果、残されたのは3つの派遣先に対して3年の男が私含めふたりと2年の女がふたりでした。これがどう割り振られたかは言うまでもないでしょう。ジェンダー云々などクソ喰らえな私ですが、このことに不満はありません。外周警備をすること自体が許せないだけです。あと、私もパレードに行きたかったです。

 今度はひとりで駐車場を散歩します。ひとりで過ごす時間はずっと長く感じて、いるかもわからない今から来る奇特な者を探しました。チケット争奪戦のリロードもそうですが、こういういつ来るかわからない(なんならそもそも来るのかもわからない)ものを待つのがとても苦手です。集中力が続きません。

 「休憩時間はウェア*2を脱いで大学祭を楽しもうね!」と公式発表にはあったはずですが、ダンサーのせいで休み時間は午後の遅い時間でした。出店の食べ物は売り切れ、展示のスタッフはだれている頃です。まぁこのだれこそが文化祭という感じもしますが。

 出店は諦め、友人のいる写真部と漫画研究会へ行きました。漫画研究会では部誌とイラストを拝見したのですが、どうやら波長の合いそうな感じがします。超てんちゃんの絵はこの感覚をさらに強めました。

 この日最後、つまり今年最後のシフトはあろうことか教室待機でした。大学祭の鳳が近づき、委員たちも迫る撤収作業に備える中、私はひとりぽつんと取り残されて窓から外を眺めていました。ちょうど、病室から外で楽しそうに遊ぶ同年代を見る病弱な子供になった気分です。

 撤収に使う物品も保管されていたのでたまにそれらを取りにくる者もあったのですが、私が手伝うほどのことでもないので出番はありません。こんなところにいるくらいなら撮影禁止の看板と一緒にしゃがんでいる方がまだマシです。

 そういえば、今回はカーテンコール*3というものがありました。2日目の最後に行われるイベントで、各部署ごとにステージへ上がって10秒くらい話してお辞儀をするのです。委員長や局長クラスだけでなく全委員に参加権がありました。

 まぁ、厳密な全員ではありません。一部の仕事に配置されている委員はそれを優先しなくてはなりませんでした。かわいそうに、福引の最後の方に配置された者も不参加を要請されていました。閉会間際にもっとも忙しくなると見込まれたからです。結果的に正しい読みだったとはいえ、やはり個人の犠牲でこの祭りは成り立っています。

 教室配置はそれらの仕事として挙げられてはいませんでしたが、いくらいてもいなくても変わらないだろうとはいえ抜けてもいいのかわからずにいました。すると全体グルに連絡が入り、カーテンコールは中止されるとのことでした。

 時間が押していたからかもしれませんし、ちょうど閉会間際を狙ったかのように降り出した雨のせいかもしれません。行くべきか否かや何を話すべきかを考える必要はなくなりましたが、こうして私は現役最後の大学祭をひとりぼっちで終えたのでした。

 撤収作業はステージエリアに割り当てられました。まず周辺のテントを解体し、カラーコーンや机といった備品を倉庫へと運びます。それぞれの備品には番号が与えられており、それによって使用企画や現在地が管理されます。すべての番号の備品があることを確認して、私はカラーコーンのポールを抱えて倉庫へと向かいました。

 道中、正門付近のテント(ここではパンフレットが配布されていました)にいたミラージュから、ついでにここのポールも持っていってくれないかと頼まれ、それも抱えました。なお、備品を管理する総務部が番号を取り違えて誤った番号のものが割り当てられており、そのことを告げるよう言われました。

 倉庫には総務部の者がいて、どこからどの番号を運んできたのかを管理しています。ステージから持ってきたものは問題なく通りましたが、案の定正門から持ってきたポールは止められました。事情を説明するとその下級生らしき女は司令部と連絡を取り始めました。

 トランシーバー、欲しかったですよね。コールサインを決めて悲惨な現状報告をしたり、必死に助けを求めるも誰一人として反応してくれなかったり、助けを求める下級生のところに颯爽と登場したりしたかったです。「CP、CP、こちらアルファ9!客の一斉襲来を受けて処理が追い付かない!増援を送ってくれ!オーバー!」「<ruby><rb>だめだ</rb><rp>(</rp><rt>ネガティブ</rt><rp>)</rp></ruby>。増援は出せない、現有戦力で対処せよ。オーバー」とか、「CP了解、こちらHQ。各班、余剰戦力を救援に向かわせろ。オーバー」みたいに。

 さて、司令部からの声は私にも漏れ聞こえていました。どうやらこの取り違えについては把握していたようですが、「入れないで下さい」との指示でした。手違いをしたのはそっちだというのに、まるでこっちが間違ってるみたいな扱いをして追い返し、一切カバーもしないというのはむかつきますね。

 ちょうど帰るところで正門に配属されていた後輩と遭遇しました。正門の方に連絡がいったのか、ポールを回収しにきたようで、会えてよかったのでしょう。後は彼女らに任せ、ステージへと戻りました。

 この頃には辺りがすっかり暗くなり、雨も依然として降り続けています。ステージ周辺には解体業者が到着しており、委員たちは業者が解体したステージの鉄パイプみたいなパーツをトラックへと運ぶ役でした。とても重いとまではいきませんが、とにかく数があって人は少ないので消耗する仕事でした。雨の中でというのもその疲労感を加速させます。

 対外部の同期である上流階級も共にこの仕事へ配属されていたのですが、すっかり憔悴しきった様子です。聞けば、彼は対子供企画でストラックアウト(で合ってましたっけ?積み上げたダンボールにボールを投げて崩すやつです)を担当しており、ダンボールを積んでは子供に崩され積んでは崩されを繰り返す内に、その徒労感に潰されていました。そこにこの労働が重なってしまったのです。賽の河原じゃんと言ったら通じませんでした。賽の河原は一般教養に入らないみたいです。

 ここには広報局とステージ企画班がいたはずでしたが、ろくに顔が見えず識別できませんでした。向こうもきっと私のことはわからなかったでしょう。曇ってろくに見えない眼鏡も外していたので尚更です。ある程度人数はいたはずですが、雨と疲労とで後半はほぼ会話もなく、よく知っていて判別できるほんの数名とだけ働いていたような気分です。

 やっと最後の資材を業者のトラックに積むと、我々は何もなくなった現場を後にしました。屋外の大規模な撤収対象はステージくらいのものなはずですからもうみんなとっくに控室へ来ていると思っていましたが、思っていたより人はいませんでした。大変なのはどこも同じだったようです。

 現役最後の大学祭であり、かつ初めての対面開催でしたが、去年よりもずっとひとりだった気がします。パレードはまだマシでしたが、ほとんどのシフトで私は賑わいの近くから隔離され、場合によってはキャンパスから物理的に隔離されました。大学祭なのにキャンパスにいないって何ですか。こんなの警備員の仕事でしょうに。

 元来、私は限定に弱い性格です。ですから、せっかくの大学祭で何もしていないでいることが、大学祭の概念に触れずにいることがつらく感じるのです。こういう日なら、労働だって歓びたり得ます。たとえどれほど忙しくてヘビーでも、大学祭で仲間と働くことからしか摂取できない栄養素とか快楽物質とか、なんかそんなものがあるはずです(もっとも、これはすべてについて言えることです。例えば「文化祭で学校中が賑わう中、空き教室で過ごす」なんてのもなかなか強い概念ですよね。難しい問題です)。

 全員の帰還を待ち、我々は控室から撤退しました。教室を使っていてもいい時間が終わったのです。屋外で再集合すると、恒例の記念写真撮影や上層部への労い、花束の贈呈が行われました。贈る者が贈られる者に、わかってはいてもあっという間でどこか寂しいものです。後輩と、対外部と、同期と写真をたくさん*4撮り、思い出のダメ押しに励みました。

 なんと素晴らしき光景でしょう。なんと濃厚な文化祭濃度でしょう。何かクリエイティブなことをしたい、仲間と何かを作り上げたいという最初に思っていた形とこそ違えど、私が欲しかったものは手に入ったような気がします。

 何かを作ることが好きなのは今も変わりませんが、結局は仲間と作業するその時間とか、締め切りが急速に迫ってくる時の生の実感とか、作ったものをみんなが褒めてくれた時の承認欲求とか、そんなものが欲しかったのでしょう。そして、それはこの対外部にだってあったのです。このために生きてきた、そう思える時間がここにはありました。

 しかし、離れたところからその様子を見つめている者がいました。輪に入れないコミュ障ではありません。彼らは、大学に雇われた老いぼれ警備員共でした。

 この後校門のあたりで委員会全体の3年生で記念写真を撮りました(撮り忘れていたので)が、「苦情が来るから静かにしろ」と言われました。どうせここの近くなんてぼろ家と寮くらいしかないじゃないですか。「撮りましょうか?」くらい言えないんですか?

 内輪で楽しくやっている(しかも特別な日ですからね)大学生の集団に水を差すなんて、並大抵のふてぶてしさではありません。象の足裏くらい分厚い面の皮を引っ提げてよくもまぁのうのうと娑婆を歩いていられますね。学費が申し訳程度のクリスマスツリーの電気代として使われるより、こいつらの給料になっていることの方が気に入らないくらいです。

 スポンジみたいに穴だらけの脳味噌には何を言っても無駄です。適当に流してとっとと打ち上げへ向かいました。この代になってから全体でご飯へ行くのは初めてです。

 打ち上げはじつに楽しい時間でした。飲み放題だったので日本酒をストローで飲んでいると、2年生の女も飲めることが判明しました。以前、私がゴッドフィールドの修行(NPC対戦)をしていると話した際にひとりだけわかってくれた子です。やはり彼女には見所があります。

 これまでは割とおとなしめだった同期も、今回はいい具合に治安が悪くなってきました。いい兆候です。タチの悪い酔い方をする者はいないけれど距離感は近くなっているのです。こういうのを待ってたんですよ。

 楽しい打ち上げが終わった後、カラオケで二次会をしようということになりました。突如4年生もなぜか合流し、オールが始まりましたが、その間の記憶は飛び飛びな感じです。まともに歌えたかはわかりません。いつもそうですが。

 気づくと、私は家の近くの方の駅にいました。慌てて簡易スキャンをしましたが、特に何か失くしている様子もありません。最後に覚えているのは、余った酒の缶をいつものように渡された時に後輩へ「いずれ君もこうなる」と告げたところです。あれはカラオケを出てすぐのことだったはずですが、ここへ来るには乗り換えをしなくてはなりません。誰かが送ってくれたのでしょうか?どうやって辿り着けたのか、未だに謎のままです。

 次の日はなぜか授業がありましたが、家に帰りついた後10時間くらい寝たので当然出られませんでした。こんなところに置く方が悪いと思います。

 これは僻地キャンパスの大学祭でした。一方、月末には内地キャンパスの大学祭があり、こちらは3日間開催ともう日数の時点ですでに差別されています。私としてはどちらも1週間くらいやってもいいと思っていますが、わざわざ格差を作っているところが問題です。ジェンダー平等の前にキャンパス平等を実現してください。

 見かけた記憶はないのですが、内地キャンパスからの応援がこちらに派遣されていたそうです。そういう契約だったのか、こちらからも内地キャンパスに人員派遣をすることになっていました。私はディズニー愛好会の仕事で内地に行くことになっていたものの、シフトが被ってしまいました。

 さらに、実習が重なるという不幸により愛好会で働けるのも最初の2日間だけでした。最終日の昼過ぎにはキャンパスを発って空港へ向かわなければなりません。準備日は愚かにもアルバイトを入れたせいで出られませんでした。

 出店の手伝いははじめてのことでした。初日の朝に割り当ての場所へ向かい、テントや什器の搬入を手伝いました。すると、テントを設営する段階になってここの誰も組み立て方を知らないことが判明しました。ここは、僻地キャンパスの実行委員である私の出番です。

 こちらでも役に立つとは思いませんでした。人手不足のせいで末端でも組み立てに携わらずを得ない我々ならではのスキルです。とはいえ頼られるのはやっぱり嬉しいもので、身につけておいてよかったとは思います。「僻地キャンパスの委員会に入れば誰でもできるようになります。人手が足りないから」と宣伝しておきました。

 そうして開会した内地祭り。ここまで来る時の準備中に見ただけでもそうでしたが、とにかく規模が違う。出店の数を見ても、僻地の数倍は軽くあるようです。

 肩に乗せたゼロの首に手作りの看板を掛けると、とてもいい感じです。そのまま宣伝のために歩いたり、会計作業に勤しんだりしました。当然、レジはありませんからミスしそうでずっと不安です。

 そういえば、この本祭で後輩3名となかよくなりました。ひとりはミッキー推しの女で、次期サークル長と目されています。人当たりがよく、話していて楽しい子でした。残りのふたりは珍しく酒に積極的な存在で、私にも遠慮せず接してくれます。いい後輩そのものという感じがしますね。

 ぜひ彼らとも打ち上げに行きたかったのですが、悲しいことに最終日は実習と被っていて、一足先に東京を発たねばなりませんでした。少し不完全燃焼的な、祭りの終わりです。

*1:同じサークルだったのかもしれません

*2:委員は特注の上着を着ます

*3:元ネタは知りませんがかっこいい言葉ですね

*4:当社比

生存報告: 2022-9

にょわ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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<学校>

 先の何も動きがなかった期間、近大*1は学校側に提出した文書の認可を待っていたそうです。我々としてもこうなった諸悪の根源が学生生活課でしたし、わからない話ではありません。そうして待っていましたが、そろそろ動かなくてはまずい状況でした。

 委員会上層部から押し付けられたこの企画について、我々は広報が目的であると聞いています。つまり、互いの大学祭の宣伝です。正直、こんなものを誰が喜んで観るのか私自身わかりませんが、目的は必要です。それがなければいよいよどうしようもないものになりますからね。

 さて、前回の(そして唯一の)会議では、互いの企画の責任者へインタビューをそれぞれ行うということが決定されていました。つまり、攻めと受けを交代した2パターンが作られるわけです。白き英雄/黒き英雄と同じですね。

 そして、我々の大学祭は近大より先に開催されます。聡明な読者諸兄ならおわかりでしょうが、我々がインタビューされた動画は我々の大学祭を宣伝するためのものです。では、それを公開すべきはいつか?

 もちろん、我々の大学祭より前でなければなりません。終わった企画の宣伝をしても無駄ですからね。ましてや、近大の大学祭当日などもってのほかです。逆ならまだわかりますが。以上を踏まえて、意訳ではありますが以下のログをご覧ください。

 

私「そろそろ撮影に取りかかりたいんですが、場所はどうしますか?以前そちらが言っていたラウンジは█日までに使えるんでしょうか」

敵「そこまでには空いてないですね」

 

 この時点で奇妙な話ではあります。我々がインタビューを受けるというのに、我々を呼びつけるとは見上げた図太さです*2。①向こうから提案した場所であり、②以前から期限は決まっていたのに使えないという2点で、我々は不信感を強めました。

 このグループには、敵側だと責任者であるNPC*3、広報局長、あとその他大勢がおり、こちら側だと責任者(らしい)私と対外部の者たちに加えスネーク(広報局長)、企画局長、委員長が参加しています。また、途中から互いの企画責任者も参加しました。

 

同志*4「場所の確保に難航していては、期限が来てしまいます。仮に場所を確保できたとしても、我々のスケジュールでは出向くことが困難です。そこで、ZOOMでのオンラインインタビューはいかがでしょうか?」

敵「Zoomでのインタビューですと、誰も見てくれないクソつまらない動画になりますけどそれでも大丈夫ですか?*5

 

 このメッセージを私はリアルタイムで見ていましたが、つい「このFランがよ!!!」と口をついて出てしまいました。ヒトは無意識の偏見や差別を抱いているものですから、反省は特にしていません。八戸のホテルの部屋にひとりでいるタイミングでよかったと思います。

 すると、いきなり電話がかかってきました。同志からです。電話に出ると、開口一番に「これ喧嘩売られてるよな?」と言われました。宣戦布告されたと思ったのは私だけではなかったようです。

 確かに、相手の言わんとするところもわからないではありません。オンライン会議でのインタビューは、ラグによって冗長化するでしょうし、画質もいいとは言えません。とはいえ、手を組むはずの相手が出した案に「クソつまらない」を返すのは文明人の行いではないでしょう。電話の後、もうひとつメッセージが来ました。

 

敵「公開はうちの大学祭なので、そちらの大学祭が終わってから収録できればと思うんですが、いかがでしょうか?」

 

 気づけば私は高速でキーパッドを操作していました。レスバの時間だからです。これまでの不審な言動の理由がやっとわかりました。

 「いかがでしょうか?」ではありません。私の認識が正しければ、公開時期は我々の大学祭の前ということで決着しています*6。仮にこれが合意までは至っていないとNPCが捉えたにしても、いくらか考えれば公開すべき時期は自ずとわかるはずです。

 つまり、事前決定をしれっと覆し(もしくは決まっていないことを勝手に決め)たのです。我々にしてみれば寝耳に水です。公開時期という重要な点ですれ違いが発生していたのなら、話し合いがうまくいくはずもありません。

 もしかすると(到底考えにくいことではありますが)、相手は何か勘違いをしているだけなのかもしれません。この企画が宣伝を目的としていることを思い出してもらえば、公開すべき時期がいつなのかがきっとわかるはずです。

 

私「インタビューは受けた側の企画に対し宣伝効果を発揮します。我々を撮った動画は我々を宣伝するものであり、その逆も然りです」

敵「話が読めないです……。何の宣伝ですか?」

 

 続けて打とうとしたところに即レスされました。話の途中なのだから話が読めないのも道理ですが、そもそも話を読もうとしましたか?私がすべきことは、①今回の目的は宣伝であり②我々をインタビューした動画は我々の大学祭より前に公開しなければ宣伝の意味がないとわかってもらうことです。

 

私「大学祭ないし取材対象企画の話です」

敵「動画の公開日ってそもそもうちの大学祭の当日ですよね?」

 

 違います。

 

敵「なら宣伝効果がどうのこうのって話は日程調整と関係なくないですか?」

 

 敵は思ったより強大でした。プランA「自分で悟ってもらう」は通じそうにありません。近大の本祭公開ということにこだわられては、話が進まないのです。我々としてもこちらの本祭より前に配信するという点は譲れませんからね。

 こうなっては、プランB「論破して捻じ伏せる」を発動するしかありませんね。丁寧にちくちくしてボロを出させましょう。理はこちらにあるはずです。

 そう思って文書を打ち始めたところに、またもや電話がありました。今度は上流階級*7からで、弊学側で作戦会議をしてから話を進めたいので一旦レスを待ってくれとのことでした。憤りは収まりませんが、渋々矛を収めます。

 翌日、スネークが暗躍し、敵側の広報局長と話していたことが判明しました。認識のズレを感じると伝えたところ、その広報局長も同じことを感じていたようで、と話してくれました。その女の見立てによれば、認識を共有できたので今後は問題ないだろうとのことだったので、我々は次の動きを考えました。

 公開のタイミングという点で合意できるのなら、残る大きな課題は①場所と②時間です。動画の内容や台本は、これらに合わせる方がよさそうだったので、「攻めと受けを交代して動画を2パターン撮る」計画を変更し、「1本の動画の中でクイズ企画*8のインタビューを互いにする」計画にしようという案が出されました。

 これであれば、リソースをすべて1本に集約できます。相手が同じ認識となったらしい今、一刻も早く撮影に入らなければ期限が来てしまいます。1本で両校を宣伝するものではありますが、依然として我々の本祭より先に公開する必要があるのです。

 

同志「お願いと提案があります。今の計画では遂行が困難であり、公開が私たちの大学祭より後になってしまいます。それでは宣伝という目的を果たせません」

同志「そこで、互いのクイズ企画をインタビューし合う動画を撮るという方に舵を切るのはどうでしょうか?」

敵「インタビューは可能です!公開日は変わらずうちの大学祭当日ですが大丈夫ですか?」

 

 文字を読めていない恐れが出てきました。認識を共有し、懇切丁寧に説明しお願いまでした上でこれならば、我々にはもう救いようがありません。手強さを再認識した我々は、内輪のグループで再度意見をまとめることにしました。そこに私が怒りのあまり投げたのが以下です。もちろん本気ではありませんが。

 

 後半のメッセージのみ読んで返信していませんか?

 どうやらこの企画の目的が広報であることをお忘れのようです。我々の大学祭の宣伝とならないのであれば、この企画は我々に一切の利をもたらしません。

コラボといいながら、██側は自身の要望を押し通すことにのみ興味があると見受けられます。終わったイベントの宣伝をすることにどのような意味を見出しているのかは想像もつきませんが、目的意識を共有できない相手に費やす時間はないのです。

 現状が変わらないのであれば、我々としてはこれ以上██側とコラボする利点がありませんので、企画からの即時撤退を行います。

 

 できるなら本当に撤退したいところです。プッツンして台無しにしてやってもいいんですよ。私は役職を持たない一般構成員でしかありませんからね。

 上層部は来年以降も関係を保ちたいなどと吐かしていますが、こんな縁はクソ喰らえです。ない方がいいでしょう。弊学の核弾頭と語り継がれるのであれば本望です。なんとなくかっこいいですから。

 ところが、ここで上層部たる委員長が初めて動きました。委員長は、私の意見を「ごもっとも」とした上で(冗談は冗談として流してくれればいいんですよ)、こちらからコラボを打診した手前、どうにか穏便に済ませたいと言いました。初耳です。というか、相手から押し付けられたならともかく自分から言い出したものを手に負えなくなったから他部署に押し付けた者がいるってことなんですね。その人、ペットは飼わない方がいいと思います。

 相手の妙な強情さも、これに起因するものだったのかもしれません。元々の発案者だか担当者が何を思ってコラボを企画したのか、なぜこの大学を選んでしまったのか、今となってはわかりません。ただひとつわかることは、その人物からは一切の引き継ぎも要請もなかったということです。

 そして、委員長は1本の動画を撮るという路線に沿った上で「本編は敵側の本祭当日公開でも構わないが、予告編のようなものを作ってそれだけでも我々の本祭より前に公開させて欲しい」と頼んではどうかと提案してきました。何も上がらないよりは、相手が執着している本編を譲って何かを上げようということです。

 何たる軟派な意見でしょう。公開されるのが予告編のみでは、ただの劣化版ではありませんか。もともとあってないような宣伝効果であることは百も承知ですが、奴らをこれ以上つけ上がらせてはなりません。縁が続くとして、これが来年以降もデフォルト化されたらどうするんですか。

 しかし、驚くべきことに他の企画参加者は乗り気な様子です。スネークは「どの道時間がないので今年の大学祭を宣伝するのを諦め、毎年ある行事としての大学祭自体を宣伝する方向に切り替えるのはどうか」と提案しました。大学祭界隈には面白いことしてると思ってもらえるかもとのことです。

 何ですかその民度悪そうな界隈。Twitterにあるんですか?それに、その方向性でやるのなら公開は大学祭より後です。もうコラボでやる意味は一切ないでしょう。やるにしても自前で作った方がいいと思います。

 とはいえ、残された時間を考えるなら、案としてはいいものだと思いました。また、スネークはここいらで再度会議をするべきだと主張していました。確かに、このままでは平行線となるだけでしょう。古臭い考えのようですが、直接話してみることで見えてくるものもあるかもしれません。

 ところで、ここまで読み進めた読者諸兄は私がこの企画の責任者であることを覚えておいででしょうか。あまりに私の力が及ばないところでばかり話が進むので、私も忘れるところでした。今こそ本来の責務を思い出し、みんなを導かなくてはなりません。

 会議を開くのは賛成です。予告編の公開という妥協案は個人的に受け入れ難く、それを出すよりはマシですし、今のままではそれもうまくいかないかもしれませんからね。とはいえ、ゆったり会議の日程を決める余裕はありません。

 これが土曜日だか金曜日のことだったので、日曜日に内輪で意見をまとめ、月曜日に開催するのがいいと私は考えました。来られない者もあるでしょうが、それはそれです。多少強引に行けば、事の重大さを認識してくれるかもしれません。というか、日付に関して相手が強引だからこうなっているのです。

 このことを内輪のグループに提案しましたが、なぜか誰もこの案に対して意見を言うよりも先に、全体のグループにメッセージがありました。

 

敵「本編はうちの大学祭で公開したいのですが、予告編をそちらの大学祭で公開することは可能です!」

 

 頑なに理由を述べず公開日を譲らない姿勢はもう今更ですから置いておくとして、なぜ予告編に言及しているのでしょうか。まだ全体グループでは言っていないはずです。自分で考え出した譲歩案だとしたらいよいよ軽蔑しますが、誰かが裏からこの案のことを打診した可能性が高そうです。これでは、本編の公開日を取り返すことは叶わなくなってしまいます。

 案の定、スネークが話していたと判明しました。この企画が荒れ始めて以降、スネークとズレを感じているような気分です。我々と敵との間にあるようなズレではなく、方向性の違いというか、考え方は同じだけど思想が合わないとでもいったところでしょうか。忠誠を誓っている身としては悲しいものです。

 スネークは会議でどうにかなると考えているようですが、私にはそうは思えません。また平行線を辿って時間を無駄にするような気がしたのです。相手は何も変わっていませんからね。

 譲るというのは結構なことです。争いあっていては決まるものも決まりませんし、そこにある感情はもっとも不要で邪魔な存在です。しかし、譲るということはある意味乱暴な解決方法でもあると思います。

 共にひとつのものに携わる相手でありながら、互いの認識はズレているというのが今の状況です。ここでこちらが譲れば、確かにその場は決まるでしょう。一方、決まらない原因のズレはそのままであり、それを調整するチャンスを失うことでもあります。

 私がずっと気になっていたのが、なぜここまで公開日に執着するのかということでした。スネークはNPCが向こうの企画責任者だからと考えているようでした。しかし、だからといって誰の話も聞かない*9までに執着するものでしょうか。元からそういうタイプだとしても、理由を一切語らないのは奇妙です。

 そこで、以前スネークが連絡を取った相手側の広報局長へ裏からメッセージを送り、執着の理由が知りたいことと会議含めこの企画への不安を訴えました。こういう時は傲慢にならず、あくまで謙虚に話して相手の申し訳なさへつけ込むに限ります。

 すると、返事が返ってきました。曰く、以前自分が話した時は大丈夫そうだったが、やっぱり変わっていなかった、再度きっちり説いたから今度こそ大丈夫だと思う、あと理由はない、申し訳ないとのことでした。

 まぁ、私がやりたかったことがこれだというのは認めます。こちらには理由があるがそちらにはないと突きつけるしかなかったのです。とはいえ、他人を巻き込んだことには後ろめたさが残ります。日頃から苦労してそうですね。女に代わりに謝らせる陽キャへの怒りが募ります。

 彼女は今度こそ説得に成功したようで、会議を目前にして「本編を我々、NG集を相手の本祭でそれぞれ流す」という案が相手から出され、我々はそれを了承しました。会議では、その詳細を詰めることになります。

 ところで、まだ動画を2本撮るつもりでいた頃のこと、私は身内にある案を提案していました。この頃は公開日の争いが表面化していませんでしたから、時間と場所が最大の課題でした。双方の都合を合わせなければならないということが、これをさらに難しくしています。

 ですから、会わなければいいと思ったのです。たまにバラエティ番組にあるような擬似的な質疑応答を再現すれば、出演者はひとりだけで済みます。事前に質問(というか台本)を準備して、それに答えているかのように演じさせ、質問は後から字幕でくっつければいいのです。

 この方法なら、互いに日程や場所の調整をする必要はありません。台本さえ作ればすぐにでも撮影を始められますし、映る人数が少なければ撮影に要する時間も少なくて済むでしょう。オンライン会議を撮影するのと違ってラグもありませんし、そして何より相手と会う必要はありません。

 かつて私はこの方法を身内へ提案したのですが、ちょうど時期が悪かったからか敵側へ伝わることはありませんでした。その後あまりに状況が急変したのでうやむやになり、そして今に至ります。

 奇跡的な軌道修正に成功したとはいえ、残された時間が少ないことは依然変わりません。今こそこの方式を採用すべきと私自身は考えていたのですが、会議ではこちら側の誰もそれを提案することはありませんでした。悲しいものです。会議自体は特に問題なく終わり、撮影の日程も決まりました。

 撮影は、敵本拠地にて行われました。我々のキャンパスよりもさらに僻地に位置しているため、我々は交通費の支出を強いられました。個人の犠牲を頼る組織に未来はありませんよ。

 ところで、ここに来るまで我々は撮影自体の詳細をほとんど詰めていませんでしたし考えていませんでした。そういえば、カメラはどうするのでしょう。居合わせた中の最新機種のスマートフォンを借りればいいんでしょうか。自撮りですか?

 現着してみると、敵側は思ったよりまともな話し方をしています。それがいいことなのかはわかりませんが、詳細や方向性を決める会議では相手が主導したため、とんとん拍子に話が進みました。特に文句もなく、私はただ頷くのみです。撮影機材も、かなりよさそうなものが用意されていました。

 主に双方のクイズ企画責任者が出演する形で撮影は進みました。途中、賑やかさを出すべく追加の出演者を決めることになった*10ものの、ジャンケンの結果1年生の女子ふたりが出演しました。

 言うまでもなく、若くてかわいらしい女の子が映っていた方が画になるに決まっています。実際、彼女らは若々しい振る舞いで盛り上げてくれました。見苦しく老いた私が出演することにならなくて本当によかったと思いますが、これによりこの日に私がしたことは拍手だけでした。頷いて拍手するだけの為政者は、案外理想なのかもしれません。

 敵本拠地は、なかなか現代的なつくりをしていました。特に、教室の中にあるコンセントはぜひ弊学にも導入して欲しいものでしたね。教室の後ろから通路を伝って延長コードが伸びていて、ほぼすべての席に電力を供給できるようになっているのです。弊学のほとんどの教室は教室の前後にしかコンセントがなく、1コマともたないバッテリーからすると、深刻な問題でした。

 それなりの時間を喰ったとはいえ撮影は無事終わり、我々は敵本拠地を後にしました。なんだか拍子抜けしたような気分です。これまでの強情さはいったい何だったのでしょう。まるで別人のような豹変ぶりに、これまで抱いてきたはずの怒りをどこへぶつければいいのかわからなくなってしまいました。恨みは消えませんし後輩へのネガキャンはきっちり展開しますが、どこか複雑な気分です。

 

 さて、9月14日は数年ぶりにホーンテッド・マンションがホリデー・ナイトメア仕様になる日でした。サークルにいたホンテとナイトメアのオタクが初日凸を呼びかけ、私含め数名が参加しました。

 これまで何度も見たナイトメア仕様とはいえ、こう久しぶりに見るとこみ上げるものがあります。他のゲストも同志が多いようで、全身をナイトメアグッズ(そのほとんどが見たことのないものでした)でフル武装したお姉さんやジャックとサリーの仮装を夫婦がして子供にゼロの仮装をさせている家族がいました。

 すっかり忘れていましたが、この日はDハロの初日でもあったのです。ナイトメア以外にも気合いの入った仮装がいっぱいいました。すごいクオリティの高いジャック・スパロウはいつかのSWの日イベントでも見かけたような気がします。私の知らない黒っぽいキャラもたくさんいましたが、きっとツイステのキャラなのでしょう。

 コスプレにはちょっと興味があります。ただ、恵まれた肉体ではありませんしセンスもありませんから向いていない分野なのだろうなぁと思っています。ブラスターみたいな劇中アイテムを作ってひとりで楽しむならいいかもしれませんが。

 ただ、SWのコスプレ界隈といえば身内ミーム垂れ流しおじさんやその取り巻きでおなじみです。イキってばかりで尊敬できないタイプの大人たちがいるのにわざわざ入っていきたくはありません。これほど救いようのない人種でなくとも、コスプレはその時点で自己表現です。それを公の場でできるような人種は、刹那人とまではいかなくてもそれなりに違う人種だと思います。

 近頃では肩乗りぬいぐるみが販売されています。ちっちゃなぬいぐるみにクリップが付いており、それを使って肩に固定できるのです。今回、初めてこのジャンルを買いました。ぬいぐるみは幽霊犬ゼロです。

 ゼロのぬいぐるみというだけでもうかわいいのですが、それを肩に乗せて連れ歩けるのはいいですね。肩を見ると至近距離で目が合うんですよ。たまにはオリエンタルランドもいいセンスのグッズを出してくれます。

 あと、今回はスニークというものがあるらしかったのですが、私はこれを知りませんでした。ステルスゲームでしか聞かない単語です。聞いてみると、どうやらショーやパレードなどの新要素を本来の解禁日の前日くらいに解放することらしく、ハロウィンのパレードふたつを観ました。フィルハーマジックもそうだったようです。

 ハロウィンのパレードは、昼間のものはミッキーたちがフロートに乗っているよくあるタイプでしたが、夕方くらいに観たものはフロートは同じなのに乗っているのはヴィランズとなぜか人間でした。この人間たちは通称「手下」と呼ばれているらしく、大人気ながらファンの民度がおそろしく低いことでおなじみだそうです。

 

 

 

<八戸>

 我が家のルーツがあるらしく、おばあちゃんの希望で八戸旅行へ行きました。今回の目的は、我々孫に八戸を感じてもらうこと、納骨、そして博物館見学です。

 どうやらずっと昔の先祖の品を博物館に寄贈していたらしく、それを見せてもらいにいったのでした。昔はうちにも刀があったそうなのですが、誰かが処分してしまったそうです。惜しいことをしましたね。

 博物館といえば、取り逃がした学芸員資格です。なぜか館長とお話しする機会があり、そのことを話したらこれまたなぜか名刺を頂きました。取り逃がしたことが尚更悔やまれます。

 その他には、海のすぐ近くまで芝生の生えている珍しい海岸や風の強い展望台、うみねこのいる神社と結構いろいろ観光しました。ホテルは地元の食材を朝食で出してくれるところだったので、朝から海鮮をいっぱい食べました。

 土産を探していて、「酒のしずく」というものを見つけました。これは琥珀糖と呼ばれるものだそうで、表面に薄く硬い膜があって、内側はぷるぷるしています。色は青と白の2色があり、これはキューブ状でした。

 見た目も綺麗で、食べても面白い食感をしていて気に入りました。なお、名前の通り日本酒が1%未満入っているとのことですが、まったく感じませんでした。もっと強いのも作って欲しいですね。

 

 

 

<クラブ>

 詳細は別の記事に書きましたが、おそらくは最初で最後のナイトクラブへ行きました。私の中には、ああいう世界への憧れと蔑みが同居しています。いわゆる夜の世界、マッチングアプリやドラッグ、ナイトクラブにトーヨコで構成される世界やそれの香りがするものをひっくるめて、私は個人的に「刹那」と呼んでいます。なんと軽薄で野蛮で鮮烈な生き方だろうと思う一方、自分には手が届かないものゆえの憧れもあるのです。

 行く前からわかっていたことではありますが、実際に行ってみて彼らとはまったく違う生き物であることが改めてわかりました。彼らと私は、たまたま似た言葉を使うたまたま似たヒトガタというだけで、まったく別の世界にまったく別の理で生きるまったく別の生き物です。この再認識がいいことなのか悪いことなのかはわかりません。

 平たいレーザービーム。青いライトに照らされた廊下。スプラ3の広告が見えたテラス。私を執拗に追い出したがる女。サラシの売女とロリコンの外人。寡黙ながら図々しい黒んぼ。人生経験と呼ぶべきか否かもわからないこの一夜は、鮮烈な経験ではありました。あの夜わかったもっとも大事なことは、はじめてのクラブにひとりで行くべきではないということです。

*1:近隣大学

*2:しかもこのラウンジは我々のキャンパスからかなり離れています

*3:こっちの話が一切通じず相手が言うことは一切変わらないので

*4:我々側の企画責任者

*5:原文ママ

*6:「公開はうちの大学祭で……」「待ってください、それだとうちのが終わってるんでうちの大学祭開催よりも前にして欲しいです」

*7:この者も今回の企画に参加していました

*8:これはどちらの大学祭でも行われることから選ばれました

*9:そういえば、相手側の他のメンバーは誰もを止めないのでしょうか。同じ責任者でも、止められてばかりの私とはえらい違いです

*10:撮影は任せきりだったのでこちら側から出すことになりました

生存報告: 2022-8

 8月は夏休みです。これは今まで何年も続く真理であり、自然法則でした。しかしながら、信じ難いことに休みなのに休もうとしない者がいます。

 この夏は、サマーインターンというものが始まるそうです。7月中に申し込みをしようとしたものの、あまりに選択肢が多くて何を選べばいいのか見当もつかず、やっと見つけたよさそうなところはシステム上は申し込めるのに必須とされる説明会は締め切られていて実際は参加できませんでした。これで嫌になり、7月は終わりました。

 特に一切の情報に基づくものではないイメージによると、6-7月に申し込んで8-9月に参加するものだとばかり思っていました。実際には8月に申し込めるところも多数あるようで、まだサマーインターンのチャンスは残されていると知りました。

 それを無為にしたのです。何もしないまま8月は終わりましたし、ついでに9月も終わりました。世間のインターンはすでに秋冬のシーズンに移り変わったようです。

 ①複数のステップを要するタスクを少しずつ進めることができない、②決断を先延ばしにする、③自分からは動きたがらない、④少しでもミスすると途端にできなくなるといった性質群と就活は絶望的に相性が悪いのです。自己分析や企業研究といったタスク群を考えると動けなくなり、たくさんの選択肢を前に選ぶことはできず、OB訪問などできるはずもなく、そもそも何もしないまま今まで来たことがのしかかってきて嫌になります。

 そうそう、就活での致命的な弱点がもうひとつありました。意識の高いことへアレルギーというか嫌悪感というかがあるのです。

 発端は入学して間もない頃にTwitterで受けたサークルへの勧誘だったような気もします。あれは私に唯一コンタクトを取ってきたサークルでしたが、行くとも言っていないオンライン新歓(オンラインで知らない人と話すのが心底嫌でした。これは今でもそうです)に行く前提で話が進められ、しかも投稿を遡ってみるとSDGsについて先輩のマンションで勉強会をしようというイベントがあるようでした。

 これ以降、私はSDGsを見聞きするだけでうんざりします。もっとも、これについては不本意ながらいくらか知る内に「世界中がやってるよ!みんな頑張ろう!」という風潮が嫌いということがわかり、ヘイトの解像度が上がりました。今では魂を売り、レポートの題材に据えることもあります。

 これはさておき、大学にいればたくさんの意識高い人々を目にします。ボランティアもそうですし、若い成功者の話や自己啓発セミナーのお知らせが回ってくることもあります。それらを授業で扱うこともあります。

 なぜそこまで他人に興味を持てるのか、なぜ目先の楽しいことを無視できるのか、なぜ成長したがるのか、私には到底理解できません。友人に対しそう思いはしませんが、赤の他人がやっているのを見ると同じ人間なのが信じ難いことのように思えてくるのです。

 さて、「サーターアンダギー炭化事件」や「冷凍スパゲッティ炭化事件」をご存じの方ならもうおわかりでしょうが、私は料理が苦手です。ご存じでなくても、字面からなんとなく想像できることでしょう。ですから、普段は厨房に入らずを心掛けていました。

 なのですが、ずいぶん久しぶりに料理をしてみることにしました。気の迷いでしょう。今回作ったのは、「妹の嫌いな丼」です。もしかすると私が知らないだけでちゃんとした名前があるのかもしれませんが、私はこう呼称しています。

 これの起源は私が高校生の頃、母親が作ってくれた弁当にまで遡ります。これはご飯の上に焼いた豚肉と卵とタマネギとキャベツを置く料理です。胡麻油と醤油とネギの混ぜ物をかけて食べます。

 この混ぜ物がおいしいのですが、妹はこれが嫌いらしく、弁当として出されることは何度かあったものの、食卓に上ることはあまりありませんでした。なので「妹の嫌いな丼」です。ちなみに、今聞いてみても嫌いだそうです。

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 肉の部位やネギの種類からわからないので買い物すら難航しましたが、やってみれば案外できるものです。注意すべきらしい卵をフライパンに落とすところも、焦がさずに済みました。たまたま家に材料が揃っていて他に食べるものがなく、かつ気が向いたらまた作ってみてもいいかもしれません。

 と思ったら、こんなものを拵えました。

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 地獄ディーテ世界かと思うのも無理はありません。これは、三度炭化した私の料理であり、かつてオレンジピールとなるはずだったものです。大量のオレンジの皮と砂糖が、炭になってしまいました。本当ならこれにチョコレートを纏わせてオランジェットに進化させたかったのですが、そう簡単にはいきませんね。やはり料理は向いていません。

 これまた知られたり知られなかったりしていることとして、私はスイカが好きです。とても夏っぽいからかもしれません。もっとも、技術革新によって年中安く食べられるものになったとしても、相変わらず喜んで食べていることでしょう。

 去年、ふと思い立ってスイカの食べ放題を調べたことがありました。すると、スイーツパラダイスでやっていることは判明したものの、その時にはすでに終わっていました。そして今年、またも同じ轍を踏み掛けるもすんでのところで間に合ったのでした。

 スイーツパラダイスに行ったことは何度かありますが、いずれもコラボカフェが目当てでした。金を払って来ている以上きちんと食事はしましたが、あくまでメインターゲットはコラボ作品のメニューやグッズです。しかし、今回のターゲットはスイカです。食べ放題自体を目当てにすると、時間は途端に短く感じるものです。

 食べ放題だからといって極端に安っぽいとかいうことはなく、たっぷりスイカを楽しめました。また、数が限られている黄色いスイカに加え、桃やマンゴーもいくらか食べました。来年も行きたいものですが、他に同行してくれそうな人はちょっと思いつきませんね。

 

 

 

<学校>

 近隣大学とのコラボ企画は、なんと後半になるまで一切動きがありませんでした。ちゃんと開催できるのか、かなり不安です。前回の打ち合わせで決まったのはかなり基礎的な部分だけでしたから、行動に移すための計画はおろかその行動の詳細すらまだ決まっていないのでした。

 一方、対外部の本来の業務である協賛活動は、いったんの落ち着きを迎えていました。今年は去年よりも早くに動き始めたため、夏活動は去年以上に暇なのです。実習に出かける同期の分とそもそも誤って倍割り振られていた私の分との両方をこなした私は、多少褒められてもいいと思います。

 ところが、資金はやはり足りていないらしく、追加交渉が必要になりました。現に、私が電話した中にも「今年からはやめる」と告げてきたところがいくつかありました。去年までやっていて今年からやらないというのはなんなんでしょうね。対面開催だから協賛してくれるという読みは、必ずしも当たりとは限りませんでした。

 そうして後輩が追加協賛候補のリストを作成し、各員に割り振ったのですが、認識が遅れたのと単純にやりたくなかったので先延ばししたこともあり、割り当て分に手をつけないまま8月の終盤になってしまいました。今年入った子たちは皆優秀で、職務への意欲も旺盛です。この部署でいちばんの穀潰しは私のような気がします。

 慌てていくつかの会社に連絡を取りましたが、連絡が取れないか拒否されるかのどちらかです。どうせこうなるのなら、本当にコンタクトするのは一部だけにして残りは最初から拒否されたと共有スプレッドシートに書いておけばよかった気もします。後輩には、こういう邪な考えをしないようすくすくと育って欲しいものですね。

 サークルでディズニーシーにも行きました。なお、今回は泊まりが予定されており、初日がシーでした。あまりにも3年生がショー&パレード班に集中していたため、今回からは私もそちらを選びました。

 みんなで挑戦した結果、幸運にもテディラウンジに行けるようになりました。これはコロンビア号(大きな客船)の中にある店で、パークの中でもトップクラスの大人びた雰囲気をしています。できれば夜に行きたいところでしたが、入れただけ運がよかったのでしょう。現在では、入店権争奪戦に勝利するか運良く空いているかのどちらかでのみ入場できるのです。

 ここでしか出されないもののひとつが、テーマポートをモチーフにしたカクテルです。コラボカフェにあるようなものよりもずっとちんまりしていてずっと高いのは確かですが、今回の目当てはこれでした。2杯頼んで「これだけあれば飲み放題に行ける」と漏らした後輩への信頼度が上がりました。これのちょっと前にテーマポートをイメージしたチャームを買っていたので、それと一緒に写真を撮りました。

 なお、このチャームはかなりあくどい価格設定をしています。デザインはいいものですが、いかんせん薄くてちっちゃくて、その上クローズドパッケージなのでタチが悪いのです。そのくせして高いのが最悪です。せめてガチャガチャの景品ならまだいいと思えたのかもしれません。幸いにも私と妹とで利害が一致したため、箱買いして分け合いました。

 「ジャンボリミッキー」というプログラムをご存じでしょうか。これは子供向けのダンスプログラムで、キャラクターやお兄さん&お姉さんのレクチャーを受けつつみんなで楽しくダンスするという内容です。ランドではアドベンチャーランドの「カリブの海賊」付近、シーではアメリカンウォーターフロントのコロンビア号横で上演されています。

 さて、ジャンボリは抽選制です。たった1回の抽選に当たらなければ基本的にその日はそのショーを観られないというゴミみたいなシステムです。案の定今回も外れたので、コロンビア号横のステージが見える高台から観ることになりました。赤い橋のちょっと手前あたりです。

 ショーが始まるまでの間は自由時間となり、同期たちとホテルハイタワーの目の前にあるウォーターフロントパークを散歩しました。ある者が「みんなで避けずに噴水*1に突っ込もう」と言い出したので突っ込んだのですが、突っ込んだのは私ひとりだけでした。ショーを前にずぶ濡れになりました。

 この日は風が強かったし夏なので私自身はそこまで気にせず、ガーリックシュリンプ味のポップコーン*2を買って高台に戻りました。風に吹かれてポップコーンをつまんでいると、土産を買いに行っていたはずのサークルの代表が買ったタオルを手に戻ってきました。弱々しい抵抗もむなしく、3年生たちによってたかって拭かれました。下級生にはこの姿で憶えてもらっていることでしょう。

 さて、そこで代表が「このまま電車に乗る訳にもいかないでしょう」と言ったのが気にかかりました。ここからホテルへは春にも行きましたが、その時はバスでした。何か嫌な予感がして聞いてみると、じつは参加者がほぼ幹部のみと少なかったので泊まりは中止にしたが、幹部だけで決めて満足して私には伝え忘れていたことが判明しました。チケットはホテルで買うものと思いまだ買っていなかったものの、危ないところでした。

 私は元来、体を動かすことが苦手です。理由はもちろんうまくできないからで、うまくやるためには継続的な努力が必要だからです。ダンスもそれに含まれるのですが、今回は以前ダンス会*3に行った記憶がまだ残っており、多少は動けました。近くには幼い子供とその保護者もいたのですが、怖がられていなかったかちょっと不安です。

 そういえば、ダッフィー&フレンズと呼ばれるぬいぐるみのシリーズを見かけたことはあるでしょうか。レギュラーというか標準的なサイズでもそれなりの大きさがありますが、よく連れ歩く人を見ます。パーク内にも撮影スポットがあり、ことあるごとに出る新作衣装(転売屋の大好物としておなじみです)を着せて写真を撮るのはファンの楽しみのひとつなのでしょう。

 大学によくいる女が持っているようなちっぽけなハンドバッグには荷が重い体躯を持ち運ぶために、公式グッズがありました。ぬいぐるみ規格のリュックサックだかサッチェルみたいな形をしていて、背負わせられるようになっています。そしてその上部からは長い紐が伸びていて、人間が肩や首に掛けられるようにもなっているのです。

 つまり、鞄をぬいぐるみに背負わせることで、ぬいぐるみを楽に運搬しつつ見せびらかせるんですね。これをよく見かけました。いい発明だとは思うのですが、見た目から私はこれを磔刑バッグと呼んでいます。うっかり愛好家の前で「磔刑してるんだ、かわいいね〜」とか漏らしたら袋叩きにされそうです。気をつけましょうね。

 

 

 

<アルバイト>

 ある時、新入社員が会計ミスをしてしまったそうです。もちろん訂正の術は知っていますし、それもできるのですが、客の前で「やべ」と言ったといいます。その様子を見ていたアルマンの救援もあってその場はどうにか乗り切ったものの、新入社員は無事説教を受けることになりました。

 ミスは誰にでも起こり得ることです。レジ打ちを間違えたのなら、誤打届けを出せばいいのです。アルマンが問題視したのはその後のこと、つまり接客の態度というか接客への心構えについてでした。

 私がアルマンに説教されたことは何度もあります。理不尽だなぁと思った内容もありますが、素直に聞いていればそう長引きはしません(忘れてもらえはしませんが)。これはアルマンに限らず説教を受けた場合の標準的対応だと私は思っていました。聞くべきところがあれば聞き、どうでもいいところがあれば聞くふりだけして適当に流していれば、いずれ相手の話は終わるはずであると。

 しかし新入社員は違います。説教の最中、「もうその話はわかったので違う話をしましょう」とアルマンに言ったそうなのです。

 こちらが話を理解していると示すのは確かにいいことです。多くの場合、相手は伝えたいことがあってこちらへ話していますからね*4。ただわかったと告げるだけでなく、もうわかったから別の話をしようと説教されている本人が言うのは、もうなんというか感服しました。

 もっとも、アルマンについては、「ただ立っているだけで金を貰う訳にはいかない」とか「出勤するごとに何か店に貢献すべき」のような持論を振りかざす時点で私には理解の及ばない生き物であるという結論がすでに出されています(もっと理解できないのは、あまりいい待遇ではなさそうなのにこうしてひとり頑張っているところです。ストックホルム症候群なんですか?)。これらを周囲に強要してくるところも鬱陶しいですね。これだから努力厨や成長厨は嫌いなんです。

 新入社員と兎の噂は向かい側の店舗にも広まっています。店同士は仲がいいので、一時離席の際にちょっと店を見ていてもらうこともあります。向かい側からは案外こちら側がよく見えるので、新人たちの状況は筒抜けです(アルマンの説教も聞こえるらしいので尚更です)し、アルマンは自分がいない間の様子を教えてもらっているそうです。常に監視されているようなものですね。

 そうして明らかになったことのひとつに、新入社員の退勤があります。新入社員は中番と呼ばれる閉店まではいないシフトも多いのですが、走って帰っていくそうなのです。もちろん、まだ開店中ですから、店の中や通路には一般客がいます。

 アルマンはこのことも問題視しました。そして、これまでのことから学んだのか、ただやめるように伝えるのではなく、「オーバールックの本部から苦情が来ている」と嘘を吐きました。この話を聞いたダーウェントも乗っかり、店長の立場から援護射撃したそうです。

 さすがに効果があったようで、以降は走らなくなったといいます。私は一時的なものではないかと睨んでいますが。この話を聞いた後、新入社員が小走りというか早歩きというかで帰るのを見ましたからね。

 さて、そんな新入社員や兎は、8月の末にいつもの棚卸に直面することになります。ベテランがかなり消え、店長を除くならアルマンくらいしかまともな者がいない*5*6のでした。

 そして訪れた棚卸の日、私とペアを組むことになったのは、初めて棚卸を経験する本社の若い女でした*7。つまり、今回の棚卸において私は教える側でした。私にその役を与えなければならないくらいの危機的状況です。

 女は、とても真面目に働いてくれました。私の指示を仰ぎ、言われたことをこなし、教えたことはきちんと覚えました。間違いなく私よりも年上ですが、言うなれば「いい後輩」だったのです。

 本当にこの人が後輩だったなら、どんなによかったでしょう。新入社員は近くで経験者の社員と組み、「もっと大きな声で」と指示されています(兎は祖母が亡くなったとのことで休みました)。さらなる新人が来るのはずっと先の話でしょうが、教え甲斐のある後輩が欲しいものです。

 そうそう、いいニュースもふたつありました。まず、棚卸に追加手当が発生することになりました。参加するだけで貰えるボーナスです。遡って支給してくれてもいいんですよ。

 もうひとつは、自店や向かい側の店舗以外のスタッフと初めて会話イベントがありました。ずっとずっと昔のこと、家族でオーバールックに来たことがあったのですが、その際に妹が装身具屋で買い物をしました。

 女向けですから私とはまったく縁のないところで、妹と親が商品を吟味する間、私はひとりでいろいろ眺めていました。そして、商品の中にとてもセンスのいいものを見つけ、自分が付けることは叶わないけどきれいなものはきれいだなぁと思っていたのでした。

 そのことを思い出して品物を見ていると、店員に話しかけられました。自分が(少なくともたまには)そうしていますし、弊店はよせばいいのに寄り添った接客を掲げていますから嫌ではまったくないのですが、その質がとてもよかったのです。

 話しかけてきた店員は、幾度となくバックヤードで見かけたことがありました。普段なら話すこともない人間の肉を識別することなど不可能なのですが、この店員はとても綺麗な青い髪をしていたので、覚えていたのです。また、大きな特徴として金カムの缶バッヂを大量に付けていました。

 このことからもしや同類ではと睨んでいましたが、話してみると実際にそのようでした。オーバールックで出会った人々のほとんどは歳が離れているかもしくは波長がさして合わなかったので、新鮮な出会いです。

 そういえば、ここでは同じフロアにある店同士の交流会があるはずでした。春くらいにその予告があったものの、それ以降の延期に次ぐ延期の末、9月にパーティーがあるということでまた話が来ていました。その話は、最終的に中止の連絡が来たのでそれでおしまいです。この蒼髪の君だけでなく、店自体が気になるようなものもあるので、ぜひ交流は深めたかったのですが、残念な限りですね。

 

 

 

<Steam>

 『Despotism 3k』というゲームが無料配布されたため、遊んでみました。これは人工知能によって人間が管理された未来、その人工知能となるリソース管理ゲームです。人間たちを管理して、施設を運営するのです。

 施設には、休憩中の人間を入れておくための装置、ハムスターの車のような(もちろんそこで走るのは人間たちですが)発電装置、人間をペアで入れて交尾させる繁殖装置、ハンバーガーか何かを作るための食糧生成装置、そして人間を放り込んで融かすことでエネルギーと食糧を生み出すリアクターといった5種類の装置があります。プレイヤーはアームを動かして人間を移動させ、それぞれの装置を動かすのです。

 一定時間ごとにエネルギーや食糧がまとまって消費されるので、それらを切らさないように人間たちを働かせなければなりません。次第に施設維持に必要なエネルギーは増えていくので、それを賄うために人間を殖やして装置へ放り込み、さらに装置も拡張してより多くの人間を働かせます。操作が多くなればアームの処理能力にも限界が訪れるので、アームを増やして追いつく必要もあります。

 このゲームの特徴のひとつが、たびたび起こるイベントです。それぞれに対し、プレイヤーはAIとして対応を選択しなければなりません。イベントの内容も選択肢も、ユニークで面白い文章なのが楽しめます。

 もっとも、イベントのほとんどは選択肢によって結果が変わりますが、どう転んでもマイナスというイベントも多くあります。プレイヤーができるのは、損害を抑えることかどの施設や資源を犠牲にするか選ぶことだけです。マイナスとマイナスを比べる負の葛藤です。この点はそもそも厳しめな施設の家計をさらに難しくしており、ゲームとしての難易度は高めかもしれません。

 結局、トロフィーが解除されないイージーモードをプレイしました。その甲斐あって完走はできましたが、これを本来の難易度でできる気はしませんね。いらない人間をエネルギーと肉に分解すべくリアクターに放り込む時のとぷんという音は好きになれました。

*1:池の中からではなく地面から水が噴き出すタイプです

*2:これは非常においしいものです。ぜひ買いましょう

*3:教室を借りてひたすらパレードやショーのダンスをみんなで練習する会です

*4:なお、それと同じくらい多くの場合、相手はただキレる相手が欲しくてこちらへ話しています

*5:ベテランはもうひとりいましたが、夜にはいないので棚卸は未経験です

*6:そのふたりと私、そして新人たちで全部です

*7:通常、棚卸は経験者と未経験者のペアで行います

サワーと焼き鳥とサイリウム

 ぼくはおよそ運動と縁遠い生涯を送ってきて、それは観ることにおいても同様だった。運動音痴なのはもちろん、スポーツは内輪のものという感覚が強かったのだ。

 特に野球においてそれは顕著であり、かつてなぞなぞで「殺しても殺しても生き返るものなーんだ?」を出されて以降(正確な答えは忘れたが、なんらかの野球のポジションだった)、彼らとは相容れないと思っている。自分だけ取り残される空間は不快だ。

 ところが、誘われてはじめての野球観戦へ行くことになった。それも、草野球や野球盤ではなく大きなスタジアムの試合だ。

 最寄駅で降りると、この時点で野球の雰囲気が満ち溢れている。ユニフォーム姿のファンがそこかしこにいて、駅の建物にも大きな野球帽の装飾がある。どうやら、今回試合をする片方の球団が本拠地としているらしい。

 今回の席はかなり上の方で、黄色いポールが前の方に見えていた。スタンドの段差はかなり急で、うっかりするとこのまま転がり落ちていきそうだ。

 同行者から都度解説を受けつつ、観戦を始める。さすがに投げて打って走るくらいはわかるので、ちっぽけなヒトが動き回る様子を眺めていた。電光掲示板のおかげで、展開もどうにか読み取れる。

 とはいえ、試合の行方ならテレビ越しに観ていた方がよっぽどわかりやすい。映画館にも似たような部分があるが、球場ならではの雰囲気というものを今回知った。

 外野を源流とする応援の動きにユニフォームや選手名入りタオルで武装したファンが呼応し、スタンドがひとつの生き物のように蠢いて咆哮している。応援歌やコールにもバリエーションがあって、深い知識や経験に裏打ちされていることが想像された。

 外野からは声援のみならず演奏も聴こえてきた。あまりに熱心で統率がとれているのでお抱えの応援団や楽団かと思っていたら、ただの熱心なファンなのだという。外野席にいる連中はもっとも応援に熱心でもっとも民度が悪いらしい。想定していたスポーツファンのイメージと似ている。

 そういえば、スポーツ選手を応援する際は苗字で呼び捨てるものというイメージがある。呼び方だけではファンなのかアンチなのかわからないくらいの温度感な気もするが、これには何か理由があるのだろうか?

 また、攻守の交代時にテレビならリプレイでも流していればいいが、現地ではそうもいかない。ではどうしているのかといえば、球団が小さなイベントを挟んで観客を楽しませていた。

 ファンとチアガールでリレー対決をしたり、観客席をランダムに電光掲示板に映してみたり、果てはスタジアムを真っ暗にしてテーマソングを流したり(ファンはチームカラーのサイリウムを持っていた)と芸が細かい。中には結果次第で割引キャンペーンが開催されるチャレンジもあって、観客を飽きさせないようにする工夫が見受けられた。

 ところで、ぼくでも知っている球場名物といえば、ビールを背負った女だ。ここにもちゃんといたのだが、ビールやサワー、アイスクリームと個体ごとに商品が違うのは初めて知った。同じビールでも複数の銘柄があり、このスタジアム限定品も売られていた。

 たまたまやってきたひとりからサワーを買い、焼き鳥と共に観戦に戻る。やっていることがすっかり中年男みたいだが、屋外でヒトの熱気と共にこうしているのも案外いいものだ。

 試合が終盤になると、周囲の人々が帰り始めた。ちょうど映画のエンドロールで席を立つようなものかと思ったが、形勢不利な試合で早めに帰るのはよくあることらしい。隣の加齢臭を散布していた男も消えた。

 ナイトクラブや出会い系バーのように、今回もまた未知との遭遇だったが、やはり終わってみれば悪くない。食わず嫌いはよくないと改めて実感する。ファンの熱意はすさまじく、あれほど夢中になれるものがあるのは羨ましいと思う。

 なお、試合は5対0で敗けた。得点するところは見られなかった。