ウルリヒトゥレタス

皐月川納涼床

名作ADV『シロナガス島への帰還』で唯一無二の体験を

夏の風物詩、Steamサマーセールがやってきました。もう終わりかけですが。

私は去年のサマーセールで『シロナガス島への帰還』をジャケ買いし、見事にファンになりました。で、クリア後の興奮に任せて書いた紹介記事が案外読んで頂けたようでして、これで少しでも広まったなら嬉しいなとか思っています。このブログではもう1ヶ月近く記事を書いていなかったのですが、それでもなぜかアクセスはある程度あるようで、もしやシロナガス島関連の検索から辿り着いた人々なのかなとも思っています。

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あの記事も悪くないとは思いますが、なにせあれを書いたのはだいたい1年前(7/23)です。『シロナガス島への帰還』はこの1年でかなり変わりました。もちろんいい方に。実は私が買った少し前に大型アップデートが配信されており、解像度が倍になったりウィンドウサイズを変更できるようになったりという変化があったらしいのですが、その恩恵を最初から享受していたことになります。いい時代に生まれたものですね。ちなみに、一緒に紹介していた『Stardew Valley』も少し前の大規模アプデでかなり変わったそうです。これを機に最初からやり直してるのでまだ新要素には辿り着いていませんが。それに、今回もいつも通り友人に布教しようと思ったら、ほとんどがもうギフトとして私が贈ったか自身で買っているかのどちらかで所持していることに気がついたのです。これはもう不特定多数への布教を再度試みるしかありませんね。

そこで、今回は『シロナガス島への帰還』に起こった変化の紹介を交えつつ再度レビューを書いてみます。以前の記事と被るところはあるでしょうが、そこらへんは気にしない方向でお願いします。

そうそう、結論から言うなら「買って損はない、買おう」です。ちなみにSteamレビューも「圧倒的に好評」です。先見の明があって早くも買う気になった方、最後の一押しが欲しくてこのページを開いた方、私と同じようにジャケットだけで買う気になった方はこちらから買えますよ。

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以下、目次です。

 

 

 

 

 

あらすじ&登場人物紹介

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謎の自殺を遂げた富豪の書斎から、謎の島「シロナガス島」への招待状が発見された。ニューヨークで探偵業を営む池田戦は助手の完全記憶能力を持つ少女出雲崎ねね子と共にシロナガス島へと赴く。アリューシャンに浮かぶ絶海の孤島で彼らが遭遇したのは、胡乱な招待客たち、異様な構造の館、そして奇妙な殺人事件だった。招待客に潜む殺人鬼は誰なのか?「シロナガス島の悪魔」とは?なぜ彼らはシロナガス島へと集められたのか?見えない悪意と不穏な気配が招待客たちに忍び寄る時、島に隠された忌まわしい過去が蘇る。

 

池田戦

ニューヨークのブルックリンで探偵業を営んでおり、これまでにも奇妙な事件をいくつも解決している。自殺した富豪ロイ・ヒギンズの娘、エイダ・ヒギンズからの依頼でシロナガス島に赴いた。高い推理能力を持ち、その上なぜか非常にタフ。

 

出雲崎ねね子

池田の助手としてシロナガス島に同行する少女。完全記憶能力を持ち、推理や捜査では池田をサポートできるものの、ひどいコミュ障のため池田以外の他人とはまともに会話できない。昆布に擬態できる。

 

アキラ・エッジワース

父の代理としてシロナガス島を訪れたスコットランド系。島の秘密を詮索しないよう池田に忠告する。

 

ジゼル・リード

アキラの忠実な従者。池田にも系統が判別できない。

 

リール・ベクスター

叔父の代理としてシロナガス島を訪れたワシントンの雇われ内科医。金持ちが多い招待客の中では池田やねね子よりの感性。

 

ジェイコブ・ラトランド

シロナガス島やレイモンド卿について深く知っている様子を見せる。酒好き。

 

トマス・ハリンソン

肥満体の男。ジェイコブとは知り合いであり、彼もまたシロナガス島について何かを知っているらしい。

 

アウロラ・ラヴィーリャ

青いリボンを付けた少女。他の招待客たちよりも池田に対し親しげに接する。

 

アレックス・ウェルナー

やっぱり代理の少年。他の招待客とは距離を取っている様子。

 

ダン・レイモンド

北海油田開発で莫大な富を得た世界有数の大富豪。気まぐれで変わり者だが慎重な男として知られる。シロナガス島当主であり、島のホテル「ルイ・アソシエ」に関係者たちを招集した。

 

ヴィンセント・スウィフト

切れ者といった印象の男。「ルイ・アソシエ」の執事であり、一行の世話をレイモンド卿から指示されている。

 

アビゲイルエリスン

「ルイ・アソシエ」のメイド。通称アビー。

 

ちなみに、ホラーとグロが多少含まれています。とはいえ、本筋ではなくあくまでストーリーの雰囲気を盛り上げるうまい演出といった程度なので、過度に警戒しなくても大丈夫だと思います。あらすじだけで買いたくなった方はこちらからどうぞ。お目が高いですね。

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シロナガス島の進化

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実はタイトル画面の波も動きます

先述の通り、私が購入→プレイ→クリアした時点でも大型アップデートが配信されたばかりだったのですが、それ以降も大きな変化がいくつかありました。なお、日付はSteamから確認できるニュース履歴を参考にしています。

 

まず、2020/8/16には待望のSteamトレーディングカードが実装されました。これはカードを集めることでSteamのプロフィールに使える装飾アイテムが手に入るというもので、つまりはそれらの装飾アイテムも実装されたってことです。これでフレンドにシロナガス島好きをアピールできますね。

カードを集めることでバッジのレベルが上がり、プロフィール用の背景と絵文字がランダムに入手できます。被ってしまうこともありますが、その場合はコミュニティマーケットやポイントショップで欲しいものをピンポイントに購入することも可能です。

注意点としては、バッジはレベルが上がるとデザインが変わり、下げることはできない(=低レベルのバッジを使うことはできなくなる)ということが挙げられます。私はレベル最大のMEMORIESまで到達させましたけど。デザインを自由に選べるようにはして欲しいものですね。

なお、レアカードというものも存在し、それを集めることでレアバッジも手に入ります。こちらはまだ持っていないので、いずれは手に入れたいものです。ノーマルカードのバッジはシロナガス島の意匠が施されたコインでしたが、こちらはねね子の意匠、その名もNENECOINです。表裏でグッズ化しませんかねこれ。

 

9/4には英語版のアーリーアクセスが、10/31には正式リリースが実装されました。我々にはあまり影響がないことではありますが、いずれは『シロナガス島への帰還』で異文化交流ができるってことですね。シロナガス島の輪は世界に広がっています。

 

年が明けて2021/2/23には口パクが実装されました。まばたきは以前からありましたが、さらに「動く」アドベンチャーゲームになりました。行きつく先はアニメ化でしょうか。待ってます。

 

結構最近の話ですが、6/3にはいよいよ新BGMが実装されました。これまではフリー音源が使われており、これはこれでいいセンスだったのですが、ほとんどの曲が完全新規のオリジナルBGMに差し替えられた訳です。同時にサウンドトラックも発売されました。Steamのサウンドトラックの仕様はよくわかってませんが、とにかくBGMを聴くためにセーブデータを作らなくてもよくなりました。私含め以前にクリアしたプレイヤーの皆さんも再びプレイしてみてはいかがでしょうか。

ちなみに、6/29には旧BGM版を遊ぶ手段が追加されました。何度もゲームオーバーになって戻された旧BGMのタイトル画面が懐かしくなってもこれで安心です。

 

いかがでしたか?つい最近もアップデートが行われたばかりで、今がアツいコンテンツであることは理解して頂けたでしょうか。いずれは続編も出るそうで、これ以降も楽しみですね。「今から買っても大丈夫かな?」という不安が解けた方やこの新規要素を知って気になってきた方、もしくはその他の方はこちらからどうぞ。

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それぞれ単体で買うよりも少し安くなる本体+サウンドトラック同梱バンドルのページも貼っておきますね。

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シロナガス島のここが好き

結局以前書いたこととそう変わりませんが、やはり登場人物たちのキャラクター性作りの丁寧さに尽きますね。

 

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推理と肉体担当というひとりで完結しているようにも見える池田ですが、ねね子の完全記憶能力や豊富な知識によるサポートがうまく噛み合っていいコンビになっています。それにより無理なく推理が展開され、「なんでそんな専門的なこと知ってたんだよ」とか「どうして一瞬のことをそんなに観察できたんだよ/覚えてるんだよ」への答えとなっています。

ロイ&エイダ・ヒギンズを省いてシロナガス島に集った人々のみにしても登場人物が12名いましたが、クリアしてみて印象が薄かったキャラクターというのはいませんでした。探偵ものであるからには当然関係者を集めて謎を解明するシーンがあるのですが、そこでは犯人を選ばなくてはなりません。その際も「こいつ影薄かったからどっちとも判断できないな⋯⋯こいつが犯人でいいや」という悲しい理由の冤罪が生まれることはなく、それまでの各々の行動や発言をきちんと吟味して選べるようになっています。

個人的に好きなキャラクターはリール・ベクスターですね。彼女の活躍は本編で確認して頂くことにして、一緒に酒を飲めるシーンがあるとだけ言っておきましょう。残念なことにリールがテーマのSteamプロフィール背景はないのですがトレーディングカードは存在しており、所持しているカードを拡大表示することで確認できる絵がとても美しいことも伝えておきます。友人はこのゲームを「綺麗なお姉さんと晩酌ができるゲーム」と言って布教していました(ひとり引っかかりました)が、実際その通りなのです。

ちなみに、ソシャゲとかならまだしもインディーズのようなゲームではファンアートなど二次創作が乏しく、うっかりそのキャラを好きになった日には未来永劫供給不足から来る飢えに苦しむことになりがち(偏見)なものですが、その心配がいらないのが『シロナガス島への帰還』です。Steamのストアページから「掲示板を表示」→「作品」とクリックしてみましょう(ネタバレには注意して下さいね)。TABINOMICHIというユーザーによってたびたび絵が投稿されているはずです。このユーザーは作者の方であり、つまり作者自身がファンアートを投稿している訳です。「公式が最大手」ってやつでしょうか。もっとも、有名になるのに伴って二次創作もこれから増えてくることでしょうけど。いずれにせよ、供給不足はなさそうです。

 

他のADV(アドベンチャーゲーム)がどうかは知りませんが、このゲームには通常パートと質問パート、そして捜査パートの3種類が主に存在します。いくつか例外もありますけど。通常パートについては後述するとして、質問パートでは情報収集のために選択肢から選んで質問することができます(ここでの選択で即ゲームオーバーとかはなかったはずなので安心ですね)。ただ片っ端から聞いていけばいいというものでもなく、別の質問を挟むことで新たな情報を得られる場面も存在します。また、質問した相手が正確な答えを知っている(もしくは教えてくれる)とは限りませんし、それらの反応を観察することも謎の解明には必要となるでしょう。

捜査パートでは目の前の状況を詳しく調べることになります。怪しい場所をクリックすることで調べることができ、こちらも別の場所を調べてから戻ってくることで新たな情報が得られるというシステムになっています。本筋とは関係ないものにも案外判定が設定されており、本当に必要な情報が隠されているオブジェクトを見抜くことが求められるでしょう。もっとも、その本筋とは無関係なものをクリックした際に読める池田のコメントも面白いのでそれはそれで読んでみることをおすすめします。

「よく見ると机には動かした痕跡があって……」みたいにただ文章で必要な情報を与えられて話が進んでいくよりも、プレイヤーが自分でいろいろ調べていくという手間があった方が没入感をもたらしてくれるのです。これは質問パートについても同じことが言えるでしょう。質問する者と回答する者というふたりの人間が織りなす会話、駆け引きであるからこそ得られる情報もあるのではないかと思います。

なお、これらのパート以外にいくつかアクション的なパートも登場しますが、あらゆる操作はマウスのみで完結させることも可能です。難しい操作もないので「ストーリーは気になるけどゲームは苦手……」という方でも安心です。

 

このように没入感をもたらしてくれる質問パートと捜査パートですが、やはりADVといえば選択肢と分岐でしょう(諸説あります)。そして、通常パートに挟まれる選択肢と分岐もまた『シロナガス島への帰還』の作りが丁寧だなぁと感じるポイントなのです。

どちらを選んでも大局には変化がなく、せいぜい次に出てくるテキストが変わるくらいのいわば「無害」な選択肢もありますが、重大な結果をもたらすことになる選択肢もたびたび出てきます。片方はゲームオーバーに繋がっていたりするのですが、そのルートもきちんと描かれているのが印象的でした。ゲームオーバーという結果は同じでも、忘れた頃にゲームオーバーになるルートすらあるのです(そのルートに分岐してから結構長い間ストーリーが展開されるのです)。正解かと思わせておいて外れという落差があるって訳です。ちなみに、あるエンドには妙に力が入っており、もし初見で生存ルートを選べたとしても後で観に来ることを強くおすすめします。ADV初心者の私は「正解を絶対に選ばなくては」くらいの気持ちでプレイしていたのですが、そうではないことを教えてくれました。

なお、EXTRAモードが本編終了後に追加されます。本編をクリアしてもっと続編が読みたいと思うともう自動で続編がプレイできるようになっている訳です。DLCではないので追加購入や追加DLの必要はありません。本編がシリアスよりだったのに対し、こちらはコメディよりになっています。選択分岐ももちろんあるのですが、本編とは多少異なる性質の分岐になっています。ぜひ本編をクリアしてどう異なるのかを体験してみて欲しいところです。その本編はこちらから。

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長くなってしまった上に前回の記事を最初に上げた際ストアページへのリンクを貼り忘れた反省からちょくちょくストアページへのリンクを貼ってしまいましたが、久しぶりに書いた『シロナガス島への帰還』レビューはいかがでしたか?精力的なアップデートが続くこのゲーム、いつ買っても遅すぎることはありません。続編『遥かなる円形世界』(仮称とのこと)も製作中らしく、まだまだ楽しみは尽きません。私はとうとう「RETURN TO SHIRONAGASU ISLAND」(そう、シロナガス島は英語表記でもSHIRONAGASU ISLANDなのです)Tシャツを注文しました。今から届くのが楽しみです。

多くのレビューや感想で言われているのが「ボリュームに対して値段が安すぎる」というもので、500円やそれ以下のセール価格(なんとこの記事を書いている現在では100円です)とは思えないほどいいゲームなのです。初回プレイ時は気づけば朝になっていました。それほど引き込まれるゲームなのがこの『シロナガス島への帰還』であり、きっといつまでも自身の中に残り続けるような体験ができることでしょう。ぜひプレイして池田とねね子の物語を体験してみて欲しいと思います。はい、ストアページです。

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そうそう、本編の前日譚らしきものがカクヨムというサイトに投稿されています。ねね子は出てきませんが、作者の方が描く物語が気に入ったという方はそちらを読んでみるのもおすすめです。