ウルリヒトゥレタス

皐月川納涼床

[2022] 生存報告番外: 506番房記録 1日目

 なんやかんやで隔離される身になった。幸いにも親が看病してくれはするものの、実家暮らしでこれはかなりの負担になるだろう。宿泊療養(ホテル療養)への移行が決定された。

 泊まるホテル名が通知されたのは前日で、その際に迎えが来る時間は明日また伝えると言われていた。午前中にドライバーから時間を伝えられたものの、さらにその後事務所から電話があり、それよりも少し遅い時間を告げられた。これに限ったことではないが、今回は電話でしか情報を伝えてこない上に細切れにして「また連絡する」が多かったと思う。ちょうど、なかなか人質交換の条件や人質の場所を教えてくれない誘拐犯に似ている。

 ところが、実際には最初の情報通りの時間に車が到着した。男がひとりすでに乗車しており、彼と乗り合わせてホテルへ向かう。結局、移送対象者はこのふたりだけだった。

 ホテルに到着すると、部屋番号と名前の記された封筒が渡され、健康管理室という場所で血圧を測定するよう告げられた。少なくとも私の階にはあるようで、それぞれの階にあるのかもしれない。

 健康管理室の中は無人で、血圧の測定器や体温計が置いてあるのみだ。手短に測定を済ませ、自室へと向かう。荷物を運び入れる私の背後で扉が閉じる。ここから夕方まで外に出ることはできない。

 室内はおそらく一般的なシングルで、さして広くもない。遮光性の高いカーテンと暖色のライトのせいで、昼過ぎなのに深夜に見える。荷ほどきをしていると電話があり、封筒の中身や注意事項を説明された。その後、今度は看護師から電話があり、問診が行われた。以降、7:00と16:00に専用のシステムから体調を入力する必要があるという。

 久しぶりの入浴を済ませつつ、バスルームを確認する。こちらもシングル相応の広さだが、床にどう見ても私のものではない長さの毛髪が落ちていて緊張が走った。幸いにも、シャワーは使いやすかった。冷水と温水、それぞれの栓を捻るタイプは苦手なのだ。

 壁際の机にPCを置いたが、困ったことに壁には大きな鏡があって、机を使うとほぼその前に座らなくてはならないことに気付いた。化粧ならまだしも、自分が常に目に入った状態で過ごすというのは拷問か奇行の類だと思う。閉じられる扉もないので、少し離れたところからハンガーを伸ばし、薄めの上着を鏡の前に吊った。机上に届く光が少し減ったようだが、仕方のない代償だ。

 しばらくすると、放送が入った。時刻は16時、定時報告の時間だ。いつまで経っても入力がないと、看護師からの電話や部屋凸もあるらしい。ちょうど刑務所の点呼に相当するといえるだろう。

 そこから程なくして18:30になり、夕食の時間だ。食事の時間のみ、我々収容者は独房から出ることを許される。エレベーターで1Fまで降りると、来た時に説明を受けた窓口はすでに閉じており、ロビーの奥の方に支給所が開設されていた。もちろん無人だ。

 弁当、ペットボトル入りの茶と水、カトラリーに加えて紙パックの野菜ジュース、チャウダーやポタージュ、味噌汁のようなインスタント汁物、またインスタントの茶が提供されている。腹の具合が悪い者へはおかゆも提供されていると聞いていたが、表示によれば弁当のみでは足りない者へはカップ焼きそばも要請すれば支給されるらしい。弁当と茶、ポタージュの粉末を持ってエレベーターに戻る。

 各階のエレベーター前には電子レンジが2機設置されており、弁当を加熱することができる。ただし、独房から出られるのは配給時のみなので、使用可能なタイミングもその時に限られるようだ。別の階からも電子レンジの調理完了音が聞こえてくる。

 今日の夕食は、胡麻と梅干し付きの白米、漬物、目玉焼き、ハンバーグ、レタス、プチトマト、ブロッコリー、さつまいも、人参、ポテトサラダ、野菜(無知により名称不明)だった。梅干しは柔らかく、目玉焼きは潰れ切っておらず、思っていたよりも上質だ。

 夕食を食べ終えると、いよいよすることがなくなる。具合もさして悪くはないので、やろうと思えばこのまま徹夜で通話したり映画を観たりすることもできるのだろうが、7時の点呼が怖いので早めに寝ることにする。毎日の配給は7:30、12:00、18:30が目安らしい。これもあり、25番房の時と同じかそれ以上に規則正しい生活の人間になってしまうかもしれない。夏休みを前に、悪影響が懸念される。