ウルリヒトゥレタス

皐月川納涼床

第12次中間報告

新たな委員会執行部を選出する選挙が迫っていた。候補者は5分間の演説で投票を訴えるという。私には人望がないので出馬は差し控えたが、もし出馬するとしたらこうなっていただろう。

 

 

 

それでは私の演説を始めさせて頂きます。広報局対外部2年の██です。よろしくお願い致します。

私が委員会に入ったのは今年の春です。1年生向けに開催されていた説明会にうっかり入り込んでしまったのがそもそもの始まりでしたが、3年生や4年生の方々に導かれ入会を決めました。

それ以降、実に楽しい日々を過ごさせて頂きました。今ではもっと前から入っていればよかったと後悔しています。それゆえに、私から過去の実績を示すことは叶わず、また経験の量を披露することも出来ません。出来るのはただひとつ、志を語ることのみです。

この2年間、世間は我々を可哀想な世代だとしてきました。ただただ不運な、時代の犠牲者なのだと。孤独で満たされない、不完全燃焼な青春を送っているのだと。

確かに、程度の差はあるとしてもここにいる誰しもが影響を受けました。私の代が入学式に出席したのは1年生の終わりでしたし、最初の年の授業はほぼ全てがオンラインでした。身近な例を挙げるなら、委員会全ての局で行くはずだった夏の旅行も結局は中止せざるを得ず、果ては大学祭自体までもがオンライン開催となりました。

しかし、この2年間は忌々しく苦々しいばかりだったのでしょうか?本当に、一片の光すらない暗黒の旅路だったのでしょうか?

そんなものは、外野の身勝手な幻想に過ぎないと、一方的で無意味な哀れみでしかないと、そうも思うのです。彼らから見れば不完全な時間、ただの辛抱の時間であったとしても、我々はその時間を生きている。それこそが我々の大学時代であり、現実であり、その価値を外から推し量ることなど、決めつけることなど出来はしない。そんなことは断じて受け入れられるものではない。

私は、大学祭を通してこのことを知らしめたい。この時代の我々が作る大学祭を世に出したい。譲れない確固たる思い出として残るような大学祭を形としたいのです。

そして、こう考えるまでに至ったのも、委員会の皆さんのおかげです。高校時代の話になりますが、私は図書委員会が開催する古本市で責任者を務めていました。この経験が役立つこともあるでしょう。大恩ある委員会へささやかでも恩を返すべく、立候補した次第です。

私が立候補した理由、目指す目標は以上です。最後に、各学年に向けて少しだけ。

まずは1年生。

先の見えないような時期にもかかわらず、よくぞ委員会へ入り、ついてきてくれたと思います。皆さんの若い力には随分と助けられたものです。

年季に関して言うのなら、私はあなた方と何も変わりません。そんな私ではありますが、胸を張って初めての後輩を迎えられるような委員会を、大学祭を、どうか私に手伝わせては頂けないでしょうか。

次に2年生。

延期された入学式に始まった我々の大学生活でしたが、いよいよ我々の時代が到来したのです。確かに我々は最後の対面開催を知りません。かつてのものを完全再現することはきっと不可能でしょう。失われた伝統やノウハウだって、もう戻らないかもしれません。

しかし、だからこそ我々は自由に新しい大学祭を作り上げることが出来るのも、また確かなのではないでしょうか。新時代の先駆けとなる名誉を、皆さんと分かち合わせて頂きたい。

最後に3年生。

皆さん自身も未知に対しての試行錯誤を繰り返していたであろう中にあっても我々を育て導いて下さり、本当にありがとうございました。そしてお疲れ様でした。

皆さんが作り上げたこの委員会を引き継ぎ、皆さんから受け取ったものを次代へと継承する、その役割を任せて頂けるとするのなら、私にとっては無上の栄誉です。

私が語るべきことは以上です。ご清聴ありがとうございました。