ウルリヒトゥレタス

皐月川納涼床

[2021] 第8次中間報告

委員会内部における理知的で有意義かつ建設的、そして公平な議論の末に志望班への編入は却下され、再面接が決まった。あらすじは以上だ。

私が応募したのは広報局のパンフ班だった。適性第一という私の優先プロトコルに従いつつも、イラレの技術を習得するのも悪くないという近年稀に見る向上心が発揮された結果である。委員会負担で使えるイラレに惹かれたのは否定しないが。これを第1希望に据えつつ、次善の希望にはwebサイト班や装飾作成班を配置した。

唯一志望しなかったのが対外班だ。企業と交渉して金や物といった支援を貰うのが仕事らしい。知らない者とのコミュニケーションに一抹の不安が拭えないどころか適性がまったくないため、互いのためを思って志望は断念している。説明会では、社会的なマナーを実践的に習得できると紹介されていた。私とはとことん相性が悪い班であることは想像に難くない。

他の局へは一切応募しなかった。現代では珍しい一途さだ。パンフ班が駄目でもせめて広報局には残りたいが、委員会自体から弾かれる事態だけはなんとしても避けたい。

しかし、一緒に面接を受けた小娘(もはや2歳下だ)よりはよっぽど適性があるはずだ。特別PCに強いとは思わないが、基礎操作に問題はない(ただしショートカットは素人だ)以上、習得速度にも自信がある。再面接ではこの点を強調してみてもいいかもしれない。

面接当日、指定場所にやってきたのは私以外全員が委員だった。5人はいる。口々に意見を浴びせてあたかも正当な意見であるように錯覚させ、彼らに有利な同意(パンフ班辞退など)を引き出そうとしているのだろうか。単に圧迫面接で入会自体を断念させる心積りかもしれない。

面接が始まる。呼びつけた詫びの次に語られたのは、「パンフ班には2年生の空きがなかった。それどころか広報局自体が2年生の加入を想定していなかった」という「定員の都合」の真相だった。彼らはいかにも申し訳なさそうに(態度ならいくらでも繕える)、ほとんどの班に空きがなく広報局では対外班にしか余裕がないと続けた。

こんなところで年齢を理由に就職で不利益を被るとは思わなかった。"2年生の"空きがなかったとは、うまい理由をつけたものだ。ひとつだけ空いていた班を用意したあたりがもっともらしい。これならば面接で横にいた1年生は入っていたじゃないかと指摘されても対抗可能だ。どうにかできそうにも思うが、そもそも定員の存在自体を知らない私にはどうしようもできない。名前を言い当てられた吉良吉影の如く、してやられた気分になる。これでは私が何を主張しようが無駄だ。

他の局もまた都合が悪いとなると(他の局に希望を出し直す場合は再度面接をするはめになるらしいが、そちらでも失敗したらいよいよ私は再起不能だ)、もはや適性0の対外班でも広報局でやっていくか、委員会への入会自体を諦めるかの2択しかない。マイナスの葛藤だ。

ある友人が評するところだと「プライドがない」私は、その場で対外班への編入を了承した。委員たちも心なしか安心したような様子だ。ひとりなどは「第一志望に入らなかった奴の方が多いくらいだしそれでも楽しくやってるから大丈夫だよ」と意図を判断しかねるような言葉をかけてきた。もしかして慰めのつもりなのか?

何はともあれ、最悪の事態は回避された。仕事を楽しめる気はしないが、何らかのコミュニティに所属できたことを今は素直に喜んでおくべきだろう。幸いにも、他の班を手伝うケースはあるらしい。対外班の仕事は事務的に済ませ、もう少し適性のある仕事に応援として派遣されるような、事情を知らない者からは「どうしてこいつはこっちの班にいるのだろう」と首を傾げられるような過ごし方ができることを願ってやまない。