「面接といっても形だけだよ」という甘い言葉に誑かされ、大学祭実行委員の面接に行った。面接後、希望を信じていた私だったが、届いたのは定員の都合による再面接の知らせだった。以上が前回長々と書いた内容だ。
文面は丁寧を装っており簡潔だが、その裏に本心が秘められていることは明らかだ。パンフ班に入れなかったと仮定した場合、私の予想では①抽選で落ちた、②他の班で人員が不足し希望異動者を募りたい、③ただこいつをうちの班に入れたくないのいずれかに絞られる。
だが、③が最悪のパターンだとしてもその斜め上が存在する可能性は否定できない。その場合、以下のような議論があったのだろう。
「次の入会希望者は……あぁ、説明会にいたあの暗い奴か。第1希望のパンフ班班長、どうかな?」
「面接では編集ソフトを使った経験があるって言ってたわね」
「ならいいじゃないか」
「でも軽く撫でた程度らしいのよ。そんなんじゃ使い物にならないわ」
「それでもまったくの初心者よりはましだろう。何か問題が?」
「そうね、率直に言うわ。うちの班にこんな奴入れたくないの」
「そんなこと言わずに入れてあげなって。だいたい、個人業務がメインだからそんなに関わることもないだろう」
「嫌なものは嫌。そんなに言うならあなたのとこに入れればいいじゃない」
「えっ」
「えぇ、それがいいわ。そうしましょう。第3希望には入れてるみたいだし。定員の都合とか何とか、いくらでも説明はこじつけられるはずよね。何か問題でも?」
「いやぁ……その…………彼もそっちを希望してるんだし、ね?」
「私が嫌だって言ってるのよ、聞こえなかったのかしら。最初からこっちに押し付けようとしてたんじゃないの?恥を知りなさい」
「そんな、これは倍率があるような面接じゃないんだよ!君だってわかってるだろう?いくら理由をつけたところで自分以外全員が受かってれば不審がられるに決まってる」
「知ったこっちゃないわ。そうなったらあなたの責任だし。どうせ友達いそうにないタイプだったから心配ないわよ」
「それはそうだけどさ……。なぁ頼むよ。君がうんと言ってくれれば全て丸く収まるんだって」
「あら、あなたがうんと言うのでも変わらないわよ?いい加減諦めたらどうかしら」
「僕だって班長なんだ、責任ってものがある。僕の班に得体の知れない奴を迎えたくはないんだよ」
「あなたは班長である以前にこの部署の長でしょう。どこに入れたって変わらないわよ。ただし、私のところだけは断固として拒否させてもらうけど」
「みんなのためでもあるんだ。最も関わりが少なくて済むのは君のところなんだよ」
「丸め込もうったって無駄よ。それじゃあ矢面に立つのは私じゃないの。嫌だって言ってるのがわからないのかしら。あなたのとこに入れて、どうにかして追い出せば済む話でしょう」
「それなら尚更君のところに入れた方が……」
「なんですって?」
「あぁ、いや、そんなつもりじゃ」
「じゃあどういうつもりだったっていうの?ほら、言ってみなさいよ。さぁ」
「だから、その、パンフ班ならさ、あー、ほら、技術面での能力不足を理由に解雇できるだろう?うん、そうだ」
「そう」
「そうだよ、うん」
「そう。もういいわ。本心を言いなさい」
「えっ、あの、本心も何も今のが」
「嘘をおっしゃい。そんな下手な嘘、子供でも見抜けるわ。大方、私に怯えて辞めるとかそんなとこでしょう」
「そんなこと考えるはずないよ。君が怖いだとか恐ろしいだとか、ねぇ?君だってそんなことないって思うだろ?」
「怖いだの恐ろしいだのなんて私は言ってないわよ。墓穴を掘るのが趣味なの?掘ったついでにとっとと自分も埋まって欲しいのだけど。そうそう、言っておくけどあなた以外の班長で連合を組んでもいいのよ。そうすれば受け入れ先はあなたの班だけになる。我ながら名案ね」
「そんな……わかったよ、他の部署で受け入れてくれるか掛け合ってくる。これでいいかい?」
「自分が長だってこと忘れてない?プライドが欠片もないのかしら。この期に及んで保身だけは忘れないのね、見上げたものだわ。好きにすればいいけど、私のところにだけは戻さないでね。それと、他の長との交渉もあなたがするってことわかってるの?もし受け入れてもらえなかったらいよいよどうしようもないってことは?出来ないことは口にしない方がいいと思うわ」
「はい……その通りです………」
「もう気力が尽きたの?なんて情けない。こんな軟弱者と会議に付き合わされる身にもなって欲しいものね」
「ごめんなさい……」
このような経緯で私の希望は却下され、再面接に至ったのだろう。今から不安で仕方がない。今度は希望を信じられない戦いになる。アルバイト以外でも面接に失敗するとは思わなかった。