ウルリヒトゥレタス

皐月川納涼床

実習で異文化交流 その⑩

6日目 後編 里はここから遠い山の中にある。最良の手段であるバスがない以上は歩くしかない。地図によると1時間以上かかるようだ。幸いにも、道はそこまで複雑ではなさそうだった。今から出発すれば、どうにか帰りはバスに乗れる。山へと進路を取った。 なお…

実習で異文化交流 その⑨

5日目 後編 誘ったものの疲れ果てたらしい先生とやはり乗ってこない影武者を除いたいつものメンバーで打ち上げへ行った。普段は無料のカラオケがあったらしいが、今はお上から睨まれないよう中止しているらしい。大学の公式の授業で同じ人物と3日間も部屋を…

実習で異文化交流 その⑧

5日目 中編 館内でも目を引いたのが、ヤングアダルト向けのコーナーだ。最近では多くの図書館に配置されており、地元の図書館にもあった。10代最後の日に何をしようか迷った挙句、「未成年優先閲覧席」を使ったことを思い出す。あれが最初で最後だろう。大抵…

実習で異文化交流 その⑦

4日目 後編 準備自体は想定していたよりもずっと軽いものだった。書庫に保管してある売り物の本が入ったダンボールを会場近くまで運ぶだけであり、陳列は明日やるのだという。狭苦しいエレベーターには苦戦したが、大きな遅れもなく作業は完了した。 その後…

実習で異文化交流 その⑥

3日目 後編 自動車図書館の見学を終えた我々は、駅前でいったん解散した。昼食の間は自由行動となったが、メンバーは瞬く間に姿を消した。ひとりだったので、近くのファミレスの安いひと皿を食べて済ませた。その後は近くのブックオフまで散歩して時間を潰し…

実習で異文化交流 その⑤

2日目 後編 集合場所の部屋へ行こうとしてふと気づいた。ホテルの部屋にはたいていカードキーを挿すところがあって、そうすることで通電される。今挿されているキーはぼくのものなので、出かけるからといって抜けば電気が消えてしまう。 仕方なく、影武者に…

実習で異文化交流 その④

2日目 中編 夕食にはホテル近辺(といってもかなり離れていたが)の居酒屋が選ばれた。注文した飲み物が届いた時、我々はちょっと困った。影武者と隣人の頼んだものがそっくりな見た目なのだ。これではうかつに動けない。みんながグラスを睨みつけ、決定的な差…

実習で異文化交流 その③

2日目 中編 ここでは独自のテーマ別に資料が並べられていたのだ。テーマ別とはいっても普段のスタンダードとはかけ離れていて、無秩序としか思えない。さらに、資料は本棚の中で背の順に並んでいる。見た目は階段状で整っていても、中身はめちゃくちゃだ。 …

実習で異文化交流 その②

1日目 後編 ピッキングには中型の安全ピンが2本必要だ。それを押し開き、だいたい直角くらいに曲げる。これさえあれば大丈夫だ。 鍵を差し込むと溝によっていい感じに鍵穴内の何やら出っぱっている部分が押し込まれ、穴が回るようになる。これが錠の仕組みら…

実習で異文化交流 その①

弊学部では、ひとつ選んで実習に行かなくてはならない。行き先は1年生の後期に提出した希望とGPAを元に決定される。その後、2年生では隔週、3年生では数回の事前学習を得てそれぞれ実習を行い、事後学習をもって単位は修められる。 つまり、メンバーと初めて…

懺悔2022

今年も年の瀬です。今年は7秒前にリビングへ飛び込むようなことにならなくてよかったです。去年はバイトの棚卸があったせいであんなことになったのですが、棚卸はなくなりました。ただし、この弊害として年末手当は消えました。たとえ来年も勤めていたとして…

無能の完璧主義

最近のゲームは、凝ったキャラメイクができるものも多い。顔のパーツや体型、髪型に声などいじれる項目は多岐に渡り、位置や色はさらに細かく設定できる。その組み合わせはそれこそ無限に近いだろう。 MMOというジャンルのゲームやモンスターハンターシリー…

10年の付き合い

今、この記事を書いているPCはMacBook Airで、調べたところだと2012年の製品らしい。背面にある林檎のロゴが光るのは昔の製品だけらしく、後輩に教えてもらった。あまりPCに詳しくはないが、RAM4GBで現代を生きていくのは厳しそうだ。 これを買ったのは中学…

はじめてのクラブにソロで行くべきではない 後編

パーティーに来たのに特に何も起こらず3時間弱が経過した。パーティーの参加者はこの後の通常営業にも参加できる。毒も喰らわば皿までだ。意地でもあと7時間、閉店まで残ってやる。 礼節のない大学生がぎゅう詰めだったフロアも、パーティーが終わり終電も消…

[2022] 9月に書く、7月の生存報告

去年の夏休み、スターバックスはJIMOTOという新作フラペチーノを発表しました。今年こそちんペチ*1はじめ3つを同時展開するものですが、去年は各都道府県で違うフラペチーノを一斉展開するというもので、なのに期間が47日もないのでコンプしようとすると1日…

はじめてのクラブにソロで行くべきではない 前編

ある日、弊学部全体グルに他学部の4年から告知が投下された。渋谷で清掃活動をし、その後クラブでパーティーをするらしい。効果はすぐに現れた。6名がグルを抜けたのだ。 確かにどうみても怪しい。カルトは清掃ボラを隠れ蓑にするという噂だし、何よりクラブ…

[2022] 7月に書く、6月の生存報告

去年の今頃何をしていたか思い出せないのはもはやいつものことですが、ここまで暑かったとはちょっと思えません。サンダルを履いたら多少はマシかと思ったのに、サンダル本体が熱くなって結局脱いで過ごしました。あったかなかったかよくわからなかった梅雨…

[2022] 生存報告番外: 506番房記録 7日目

なぜか明け方に目が覚めた。時刻は驚くべきことに5時台だ。早く寝たわけでもないのに、どうしてこの体は自殺行為をしたがるのか理解に苦しむ。窓の外からはここに来て初めての暴言だかが聞こえてきたような気もしたが、確認するのも怠くて寝た。 今日もまだ3…

[2022] 生存報告番外: 506番房記録 6日目

この起こされ方にも不服ながら慣れてきた気はするものの、不機嫌になるのは変わらない。ただ、朝食の配給開始(7:30)放送の際、最後にデータ入力がまだの者は早く済ませるように促される。もしかすると、朝は30分くらい遅くても催促の電話が来ないのかもしれ…

[2022] 生存報告番外: 506番房記録 5日目

他のことには慣れてきたが、この起こされ方にだけは慣れる気がしない。ただ、この4回の朝はすべて起きている。念を入れて何重にも仕込んだアラームを感知できなかったことすらあるが、この放送なら起きることができているのだ。未知のテクノロジーが使われて…

[2022] 生存報告番外: 506番房記録 4日目

朝についてはもうどうしようもない。掛川では自然に目が覚めていたが、ここでは強制的に起こされるというのが大きな違いだ。ただし、あちらでは教習という寝たり集中を解いてはならない時間があったのに対し、こちらにその縛りはほとんどない。 ちなみに、放…

[2022] 生存報告番外: 506番房記録 3日目

また嫌な朝だ。放送を止めるスイッチなどあるはずもない。スピーカーを塞ぐことも難しそうだ。頭を埋めて耳を塞ごうにも、ここの枕ではあまりにも頼りない。 暗闇で不機嫌になっていると、電話がかかってきた。さっき入力は済ませたはずだったが。応答したと…

[2022] 生存報告番外: 506番房記録 2日目

収監されて最初の朝は、全体放送で起こされた。専用システムへのデータ入力を準備せよという。7時の点呼だ。もうそんな時間かと思ってまだ眠い中時計を見ると、時刻は6:45だった。 体温計を腋に差してクリップのような機械(何をどう測定しているのかは不明だ…

[2022] 生存報告番外: 506番房記録 1日目

なんやかんやで隔離される身になった。幸いにも親が看病してくれはするものの、実家暮らしでこれはかなりの負担になるだろう。宿泊療養(ホテル療養)への移行が決定された。 泊まるホテル名が通知されたのは前日で、その際に迎えが来る時間は明日また伝えると…

[2022] 7月に書く、5月の生存報告

5月4日がスター・ウォーズの日であることは、もう言うまでもないでしょう。今年はやっとリアルイベントが解禁されましたが、やはり以前のものとは比べるべくもない程につまらなさそうでした。人数制限は悪い文化です。 新宿には大きなディズニーストアがあり…

[2022] 6月に書く、4月の生存報告

季節はまるで違いますが、近所で催される夏祭りが私は好きです。出店のくじ引き屋や射的屋に夢を見たのも今は昔、それらに金を使わなくなって久しい私ではありますが、今でも1日くらいは祭りに行きますし、金だって落とします。 私が買うのは、言うまでもな…

[2022] 5月に書く、3月の生存報告

今、「2022年秋リリース」とか聞けば遥か遠くに感じます。しかし、どうせもうちょっとすればそんなことは忘れ去り、秋になってようやく思い出すに決まっています。そしてその時にはのんびりと「もう秋か、早いなぁ」とか考えているに違いないのです。 手足の…

[2022] 4月に書く、2月の生存報告

彼方からの手紙のことを思い出しました。小学校の頃、おそらく近くの駅の周年企画でタイムカプセルを作ったのです。中に入れた手紙には最近の流行りとかそんなつまらないものくらいしか書いた覚えがありませんが、開ける時にはできるだけ立ち会うつもりでい…

[2022] 4月に書く、1月の生存報告

めでたい新年です。今はまだ、辛うじてそう感じていられます。雰囲気に流されているだけかもしれませんけど。 依然として寒い季節が続いています。手足の冷え込みは、今年も予想通りでした。初売りで妹と親に勧められた厚手の靴下も買いました。暖かいことは…

午前3時の35円

それは十数センチメートルの距離から僕の右耳へと飛来して、脳髄を瞬く間に焼き尽くした。がんと強く殴られたような、それでいて優しく包み込むような感触が、僕の薄れかけていた意識を襲う。システムに侵入されたコンピューターみたいに、思考が侵されて書…